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01.Mar.2024

4人のディレクターが語る。ショップ、バイイング、そしてCURRENTAGEの話。

 

この春、CURRENTAGE(カレンテージ)というブランドがメンズウェアを初めて展開する。

と説明するのは、なんだか適切でないようにも感じる。

このブランドは、メンズ・ウィメンズという枠組み自体を、否定するわけではなく軽やかに超えて、新しいものを生み出しているから。

アイデアと遊び心、骨太な背景を持ったコレクションは「2024年のファッションの潮流を変える存在だ」と、取り扱いを行うL’ECHOPPE(レショップ)の金子は言う。

今回、国内でCURRENTAGEのメンズラインを扱う4つのショップのディレクター・バイヤーに集まっていただいた。

本来であれば競合関係に当たる4人に、バイイングについて、セレクトショップの意義について、そしてCURRENTAGEの魅力について尋ねた。

服を選び提案するという仕事の背景にある血の通った思いと、2024年のファッションについての非流行的な示唆。世にも貴重な座談会を、ぜひお楽しみください。

 

 

Tany(谷篤人)

IMA:ZINE(イマジン)ディレクター 

BEAMS(ビームス)でカジュアル部門のバイヤーを担当。2017年に退社後、大阪市中津区のセレクトショップIMA:ZINEの立ち上げに参画し、ディレクター兼バイヤーを務める。

 

迫村岳

BIOTOP(ビオトープ )ディレクター 

2001年にJUNへ入社後、地元大阪でショップスタッフの経験を積みBIOTOPとADAM ET ROPÉ(アダムエロペ)のクリエイティブディレクターに就任。現在はビオトープのディレクター兼バイヤーを務めながら、常務取締役として会社を牽引する。

 

金子恵治

クリエイティブディレクター 

1995年にBAYCREW’Sに入社。2015年にL’ECHOPPEを立ち上げ、ディレクションとバイイングに携わり多数のコラボレーションを手がけた。2022年に株式会社フェアズフェアを設立し、2023年にはウィメンズのヴィンテージショップBOUTIQUE(ブティック)を外苑前にオープン。

 

安井源

UNEVEN HUB STORE (アンイーブンハブストア)ディレクター 

名古屋市で販売員を務めた後、2005年にセレクトショップUNEVEN GENERAL STORE(アンイーブンジェネラルストア)を立ち上げた。2021年にはイベントスペースやカフェを併設する複合施設UNEVEN HUB STOREをオープン。

 

 

ゴールは近いんだけど、アプローチが違うんだろうなと思います。

 

 

ー異色の座談会ですが、みなさん面識はありましたか?

 

安井 僕は全員初対面ですね。もちろんみなさんのことは存じ上げていました。長いことアパレルの世界にいますけど、名古屋拠点でやってきて、今まで接点がなかったですね。

 

ーまずは安井さんの自己紹介からお聞きしたいです。

 

安井 UNEVEN GENERAL STOREという洋服屋をやっています。2年前には大きいセレクトショップUNEVEN HUB STOREを作って、それを今一生懸命広げています。マーケットに対して想像を超えるお店であり続けることを掲げていて、HUB STOREは元々はスーパーの跡地だった場所で、広さは230坪。LAのアンティークモールとかそういうイメージで、ファッションの拠点を名古屋につくる、という心構えで向き合っています。

 

金子 名古屋でお店を立ち上げる経緯、すごく気になります。ずっと聞いていたいですね。東京は狭い社会で、同業者と関わることも多いですが、地方都市のショップだと考え方も手法も全く違いますよね。東京の場合は何件か隣に洋服屋さんがあったりして、どこでも買い回りできる。地方で見るのと、一点一点の価値も、買い物の体験も全然違うと思います。お客さん側も運営するほうも、感覚が異なるんだろうなと。

 

ー金子さんはL’ECHOPPEのバイヤーを離れられたそうですが、現在の活動について教えていただけますか?

 

 

金子 今のL’ECHOPPEは新しいバイヤーにバイイングを任せていて、より濃いコミュニティを形成する方へ向かっています。自分はそれをお客さんにどう繋げていくかを考える役目という感じですね。一歩引いて考えることが増えています。もちろん離れたわけではなく、L’ECHOPPEだからできることを続けていきたいですね。

また、自分の個人的なプロジェクトとしては、安井さんと対照的に極めて小さいお店を作っています。外苑前にあるBOUTIQUEというお店なのですが、元々、”OUR TINY STORE”って名前をつけようとしたくらい小さい。東京は地価も高いし、究極的に狭いところに凝縮させる方針です。”マーケットに対して想像を超えるお店”という意味では、ゴールは近いんだけど、アプローチが違うんだろうなと思います。

 

安井 街の特性は大きいですよね。大きいお店を作ると、小さいお店を作りたくなる気持ち、すごくわかります。自分は今大きい方にフォーカスしていますが、反動として小さい場所を求める感覚があるなと。

 

ー迫村さんはBIOTOPのディレクターとして、大きな企業の中で独立したセレクトショップを運営されていますよね。ラックにはVISVIMとTHE ROWが並んでいたりして、特にメンズのセレクトには迫村さんらしさを感じます。

 

迫村 そうですね。仕入れるのは僕だから、そこには個人的な感覚が反映されていくと思います。決まり事を作っているわけではないんですけど、らしさみたいなものが感じてもらえたらいいな、と思いますね。

 

ー谷さんはIMA:ZINEのコンセプトをどのように言語化されているのでしょうか。

 

谷 IMA:ZINEという名前は、今を残していくという意味なんです。また、一緒にやっているボスが『カジカジ』の元編集長で、セレクトショップではなく、編集部を作りたいという狙いが最初にありました。Notセレクトショップ・Butエディトリアルストアと掲げて、人と人のコミュニケーションから生まれるものに命を吹き込んで、今を残していく。スピード感を持って流行りを追うのではなく、未来を想像し、可能性を創造し、提案していくお店です。

 

60代半ばのおじいちゃんも来るし、車椅子のおばあちゃんも来るし、17歳も来るし。

 

ー改めてですが、ディレクターという職業の人が4人集まるのは珍しいですよね。バイイングにまつわる悩みを語り合ったりしたら…。

 

金子 それだけで2時間くらいかかりそうです(笑)

 

一同:(笑)

 

 

金子 ただ、自分は長らくバイヤーを名乗ってきましたが、今はそうではないのかもしれない、と先日谷さんとも話していたんですよ。

今回、L’ECHOPPEではCURRENTAGEを大きく扱うイベントを開催します。でも内容を決めているのはスタッフのみんな。彼らが選んだものを自分がどう繋げて、整えて、伝えていくか。そういう一歩引いた立場が増えてきて、もしかしたらみなさんも近いことをやっているんじゃないかなって。

 

ー金子さんは、肩書きにクリエイティブディレクターと記載されるようになりましたよね。

 

金子 まだそれがどういうものなのか完璧にはわかっていないけれど、頭の使い方は変わりました。仕事の幅が大きく広がって、「自分が着たい」よりも「誰かのために」という考え方が自然と癖づいています。常に社会的な意味を求めているというか。

20〜30代は、自分が好きという理由だけでやってきましたが、40代になってL’ECHOPPEを始めて、人と関わりながらものを作る中で、仕事への取り組み方が変わりましたね。

その人や物のいいところがあって、僕がそこに加わることで新しいアプローチができる。それが社会的な価値につながる。今の自分はそれが心地いいし、個人的な自我が強く出なくなったという感じです。

 

谷 わかりますね。自分はまず自分のお店に向き合っているので、金子さんほどさまざまな人と関わりながら仕事をしているわけではないのですが、バイイングには、ある意味正解があると思うんです。ある程度売れるものが選べれば、それで成立する部分もある。でも、自分は、そのブランドの背景、どういう思考や技術によって生まれたのかを紐解きながらセレクトさせてもらっています。その奥行きがわからないまま売るのではなく、きちんと咀嚼して、伝えていきたい。

これまでは、いかにスピード感を持って情報をキャッチして反映できるか、ということを考えてきましたが、今は逆にどうスローダウンするかが大切。各駅列車に乗れば普段気づけなかった景色が見えるように、いいものを、いいテンションで、時間をかけて売りたい。丁寧さが必要だと思います。

 

ー迫村さんはスピードの速いトレンドの移り変わりを、どのように捉えていますか?

 

迫村 BIOTOPの品揃えの中ではトレンドはあまり考えませんが、ある一定の普遍性と上品さを大切にしています。ジェンダーで服装を規定するわけではありませんが、男性らしさ、女性らしさのある服を楽しんでいるお客さんも多いですね。

ただ、基本的には自分がいいと思うもの。レディースに関しては、今自分の周りにいる人がどういうことに興味があるのかを反映するようにしています。

僕はミーハーなところと保守的なところがどっちもあって、自分が選ぶものにはあまり癖がないと思います。でも、「これは売れる」と思っていても手を出さないものもあって。そこは言語化できない直感に頼るところでもあります。スタッフにバイイングを任せることもあるけれど、時間がある限り自分で見て、選びますね。

 

ーBIOTOPらしさを言葉で共有することはありますか?

 

 

迫村 これは違う、これはいいよね、と話すことはありますが、積極的に言語化して共有はしていないですね。それよりはお店や物から各々が感じてほしいと思いながらやっています。例えるなら、自分は食材の調達係で、お店のスタッフがシェフというような感覚です。いい食材を仕入れてくるから、各々が自由に美味しいものを料理して届けてください。っていうような。

それはお客さんにとって、お店という場所が物の価値をより高める場所であってほしい、ということなのかなと思います。ファッションに興味がない人にも足を運んでほしいし、ペットを連れてお散歩にくる方もいる。併設しているレストランのLIKEで食事した帰りに見てもらうこともあります。

場所と人の繋がりかたとして、さまざまな点があるといいのかな、と思いますし、何よりも「いい場所だ」と感じてもらいたいですね。リアルなショップで服を買うという体験の魅力をもっと高めて、伝えていけたら。

 

金子 BIOTOPに行くときって、普段と感覚が違うかもしれません。「服を見たい」の手前に、あの場所に行きたいという感覚があるような。言語化が難しいけど。

 

迫村 そう感じてもらえるのは本当に嬉しいです。

 

ー谷さんは、お店とお客さんの関係性についてはどう捉えていますか?

 

谷 うちは不便な場所にあるし、安心感がある店という感じではないですが、コミュニティとしての側面は強いと思います。「そこに何かがある」という可能性をお客さん一人一人が信じて見にきてくれるというか。何回も来てくれる方には、「なんかおもろいですよね」って言っていただくことが多くて。かっこいいではなく、おもろいなんですよね。小さい純喫茶みたいな感じです。60代半ばのおじいちゃんも来るし、車椅子のおばあちゃんもくるし、17歳もくるし。でも、「入り口でUターンしようと思いました」とも、よく言われます(笑)。日本にはさまざまなショップがあって、大手のセレクトショップという基準の線のようなものがあるからこそ、うちは変な店として存在できる。似通ってもおもしろくない。それぞれの役目を持って、共存していきたいと思いますよね。

 

ーファッション業界って、ある種大きな村のようで、それぞれが好きなことをやりながら共生している感じがありますよね。安井さんの考えも教えてください。

 

安井 今までのお話、いずれも共感するところがあります。HUB STOREには飲食店も入っているので、おじちゃんおばちゃんも、犬を連れてくる方も、小学生も、幅広く足を運んでくれます。コミュニケーションスペースというイメージでお店づくりをしていますし、いろいろな会社がテナントとして入っていて、それは競合関係でもありますが、みんなで作り上げていきたいな、と。仲間づくりから時間をかけてやってきたので、他にはない空間になっていると思います。

 

ーどのくらいの数のテナントが入っているんですか?

 

安井 カフェ、デザインと生活雑貨のお店、内装家具屋など、全部で4社です。僕らはずっとカウンターポジションで、大手さんに対して、カウンターし続けてきたと思っています。でも、最近メインがぼんやりしている。中心の輪郭がなくなってきていて、カウンターも効かない。だから、自立したシーンの方向づけをして、その規模を拡大するために、自分たちがいいと思っているシーンにみんなで進んでいきたくて。それがHUB STOREに込めた願いですね。

 

 

はっとするようなセレクトも、空間の価値だと思っています。

 

ー2024年、みなさんが注目しているスタイル、自分の気分、お店としての打ち出しを聞きたいです。

 

安井 マス・マーケットに反抗する姿勢は、いまだにバイイングに反映されています。合理的・効率的に縦に積んで売るのではなく、デザイナーさんのクリエーションを幅広く反映して難しいスタイル作りに対しても力を注いでいく。バイヤーとして、ディレクターとして、デザイナーの思い描く表現の源泉を伝える努力をして、今以上にお客さんに届けていきたい。情報が広く行き渡って、いわゆるトレンドが掴みやすいからこそ、フィジカルなお店が提案できるのはより奥行きのあるものなのかな、と。

 

迫村 レディースのアパレルに関しては、安井さんの今のお話に近い感覚がありますね。もちろん売れないとダメなんだけど、「すごく可愛いけど着ていく場所が限られそう」と感じるような服を、店頭でしっかり見せて伝えていきたいからバイイングする。そこに存在するだけで素敵だなと思ってもらえることも価値で、売れるとか売れないだけが基準ではないんですよね。お店に来たときにはっとするようなセレクトも、空間の価値だと思っていますし、そういうものを丁寧に伝えていきたい。直感的に強く惹かれるものは、できる限り提案していきたいです。

一方で、メンズはより男らしいチョイスが増えているような気がします。例えば金子さんが着ているレザーみたいな、重くて無骨なアウターが増えていたり。そっちが自分の気分でもあるし、世の中みんな、そんな気にもなっているんじゃないかなって。

 

ー谷さんはいかがですか?

 

谷 今年、ということではないかもしれませんが、自分たちは”らしさの破壊”をやっていきたいなと一貫して思っています。ジェンダーレスという言葉のニュアンスとは違って、もっと自由なもの。違和感や感動を大切にしたい。CURRENTAGEにはそういう可能性を感じていて、自分は惹かれました。

 

金子 L’ECHOPPEに関して言えば、これからはある意味でアンダーグラウンドな方向性を強めていくのかなと思っています。これまでは、難しいものを誰もがわかるように伝えていきたいと思ってやってきましたが、次のフェーズはより強くて濃いコミュニティになっていくのかなと。だから、人と人が影響しあうこととか、情報を追いかけるだけでは判断できない価値のようなところに軸足が移っていくと思います。そういう意味で、CURRENTAGEは、L’ECHOPPEメンバーがみんな注目しているブランドで、一つの転換点のような存在なのかもしれない、と思っています。

 

人柄、熱量、その純度を強く感じました。

 

ーここからはCURRENTAGEのアイテムを実際に見ながらお話しさせてください。

 

金子 谷さんが初めてCURRENTAGEを見た時に僕は同行していたんですけど、めちゃくちゃ似合ってましたよね。

 

 

谷 挑戦しがいがありますよね。自分が選ぶなら、ボタンが大量についているこのシリーズ。中でもベストですね。スーツにびっしりと貝ボタンを付けて孤児院の子供達への寄付活動をする「パーリーキング&クイーン」という人たちがロンドンにいて、そのハッピーな活動をリファレンスにしていると聞いて、とにかく心が動きました。ヴィンテージの歴史背景がありつつ、フワッとした優しさや落ち感も感じさせる。僕はこれまで着たことのない服。視覚的なバランスの良さもあるし、雰囲気も感じるし、ストーリーも語れて、スタイリングの幅も広い。全身でどう伝えようかなとワクワクしています。

 

ー迫村さんはCURRENTAGEのどの部分に魅力を感じましたか?

 

迫村 まずは強烈な華やかさがありますね。男の人が着るといい意味での色気が出ると思うし、一方で女性が着ると強さを感じさせる部分もある。繊細だけど無骨なバランスで、それぞれにストーリーが感じられるのがいいですね。ミリタリーアイテムをベースにしながら平和的なメッセージを打ち出していることも印象的でした。

 

 

ーひとつアイテムをピックするとしたら?

 

迫村 ミリタリージャケットですね。こんなに手の込んだフリンジは見たことないです。大阪で大きめのコーナーを作って提案する予定です。

 

 

ー金子さんにもお聞きします。

 

金子 初めてCURRENTAGEを見させてもらう展示会に大勢で伺ったんです。それぞれスタイルがある人たちだったんだけど、男性がレディースを着たり、女性がメンズを着たりして。強い個性を持ちながら、いろんな人が思い思いに楽しめるブランドって珍しいなと思ったんですよ。どんなブランドでも、集団で展示会に行くと、熱心に見るわけではなく、ふらふらするような人が数人出てくる。でも、CURRENATAGEは全員がそれぞれ本気で楽しんでいた。メンズもレディースも関係なく、とにかく誰もが楽しめるというところに可能性を感じています。

 

ーそれができるのは、なぜなのでしょうね。

 

金子 感覚的なものと、歴史や知識によって構築されたもの。文脈とセンスがどちらも入っているので、そういった魅力に繋がっているんじゃないかなと思います。

 

ー金子さんのチョイスは?

 

金子 谷さんと被りますが、ボタンシリーズのシャツですね。イギリスで何度も「パーリーキング&クイーン」の集団を目撃していたのですが、そこを参照してものを作った人たちはこれまでいなかったなって。

とにかく手間のかかることを諦めずにやっているのがすごい。ボタンは全部手でつけている。普通、量産しようと思ったら諦めると思います。今後同じやり方がどこまで続けられるのかわからない、という類のものですね。1着選ぶとしたらこれです。

 

ー最後に、安井さんにお聞きしたいと思います。

 

安井 デザイナーの塚崎さんの知識や経験が、その物から強く感じられて、人柄、熱量、その純度を強く感じました。今のアンイーブンにはあんまりないピースだったので、ぜひお客さんに届けたいなと思ったのが、第一印象です。デザインコンシャスなアイテムはたくさんあるんですけど、エレガントさや品の良さを備えたものは取り扱っていなくて。ドレスストリートのような文脈で提案していけたらいいなと。イベント形式で、メンズとレディース一緒に展開させてもらうんですけど、そこを区別なく楽しんでもらえると思っています。

 

ー安井さん一押しのアイテムは?

 

安井 このセットアップを乗りこなしてやりたいです。ハンギングされているだけで十分絵になる。実際に着て、色々合わせてみたいし、この純度の高さを私たちなりに表現できたらなと思っています。

 

【POP UP日程】

◆L’ECHOPPE(東京・青山)

・日程:2月23日(金)から3月3日(日)

・場所:〒107-0062 東京都港区南青山3 川口ビル1F

・問い合わせ:03-5413-4714

 

◆BIOTOP OSAKA

・日程:2月23日(金)から2月28日(水)

・場所:〒550-0015 大阪府大阪市西区南堀江1-16-1 メブロ16番館 1/2/4F

・問い合わせ:06-6531-8223

 

◆BIOTOP TOKYO

・日程:5月18日(土)から6月2日(日)

・場所:〒108-0071 東京都港区白金台4-6-44

・問い合わせ:03-3444-2421

 

◆UNEVEN HUB STORE

・日程:4月6日(土)から4月29日(月・祝)

・場所:〒451-0021 愛知県名古屋市西区天塚町1-108-1

・問い合わせ:052-522-3557

 

◆IMA:ZINE

・日程:5月25日(土)から5月31日(金)

・場所:〒531-0071 大阪府大阪市北区中津3-30-4

・問い合わせ:06-7506-9378

 

 

 

16.Nov.2023

23 Autumn&Winter Collection VOL.3

 

 

 

“Vividly emotional journey”

 

 

 

世界中で美しいものを探すために旅を重ねる。

それらは、より良いマテリアルを見つける旅でもあり、

時代のムードを感じる旅。

 

コロナでのパンデミックを経て約2年半振りに出た旅。

2週間に渡ってフランス〜スイス〜ドイツを巡り、

何を見て、何を感じ

それをどのようにコレクションに落とし込んだのか。

デザイナー塚崎恵理子の旅の記憶。

 

 


 

 

VOL.3

” Place of Beginning, Bauhaus “

 

 

スイス、チューリッヒを出発して向かうはドイツ。

 

ドイツに来た1番の目的は念願のバウハウス関連の街を巡ること。

バウハウスは1919年に設立され、1933年ナチスにより閉校されるまでの14年間という短い期間だったにも関わらず“モダニズム“というデザインの枠組みを確立し、現在のデザインに多大な影響を残した総合芸術学校。

まずは、その始まりの地であるヴァイマルへ向かう。

かつてゲーテやシラーが辿り着いた自由文化の街、バッハが宮廷音楽家としても活躍したドイツクラシック文化の中心地でもあった歴史ある街だ。

降りた駅舎も歴史ある街を物語る様な佇まい。

 

 

バウハウスと言えば創立者であるグロピウスがデザインしたデッサウ校舎がシンボリックだが、 さぁバウハウス始めます!と突然あの素敵な校舎を建てることができたわけじゃない。

元々はヴァイマル工芸学校の為にアール・ヌーヴォーデザインを得意とするアンリ・ヴァン・デ・ ヴェルデという建築家が建てた校舎をグロピウスが引き継いだ、いわゆる居抜き校舎を利用してバウハウスは始まったのだ。

 

今でもバウハウス大学として現役で使われているキャンパスを自由に見学することができる。

雨上がり、到着した朝のキャンパスにはちらほらと学生が集っていた。

全体にこじんまりとしていて学生が制作したであろうデザインの休憩所やベンチが所々に置いてあるのが良い雰囲気。

ぐるりと散策して、早速メインの校舎へ入ってみる。

 

扉を開け一歩中に入ると、真っ赤な壁色に早速心奪われる。

 

セージグリーンの扉を開けるとアールヌーヴォー式の優美な曲線を描く螺旋階段。

大きな窓から降り注がれる光と影。

 

 

螺旋階段の吹き抜け中央には俯き自らを抱く女性、オーギュスト・ロダンの彫刻“エヴァ”が佇む。

シンと静まり返った校舎の中でその空気があまりにも清々しくて、息を呑むほどにの美しさにしばらく入口で立ち尽くしてしまう。

 

入口の鮮やかな赤色が持つ動の印象とロビーの静との対比を感じて、普段何気なく見ている色が持つパワーにもハッとさせられる。

 

 

静かな校舎の中をゆっくりと散策してみる。

 

確かに学生達がここで学んでいるんだなという形跡が、まるでバウハウス設立の当時にタイムス リップしたような感覚を覚える。

 

この日は雨が降った後で光がとても綺麗だったのはラッキーだった。

おかげで窓枠が落とす影までもが美しい。

 

 

階段の壁には幾何学的な壁画やモニュメントがいくつも残されている。

 

バウハウスと言えば…のシンプルな形とシンプルな色を用いたヘルベルト・バイヤーの壁画。

隣り合う壁の色も含めての壁画なのだろう。シンプルな形と色の相互作用を研究したバウハウスらしい基礎を感じる。

 

 

 

個人的に1番楽しみにしていたのは、オスカー・シュレンマーが1923年に制作した壁画。

彫刻家であり舞台芸術家としても活躍したシュレンマーらしくダイナミック。

ベタ塗りされていないタッチのおかげかどこか人間らしい優しさがあって見ていて飽きない。

 

 

平面の壁でなく湾曲した壁に描かれているのも立体感があり踊っているような躍動感がある。 壁画だけでなく手すりに塗られた青みがかったセージグリーンも壁画の色と自然に溶け込む美しいコンビネーション。

ここでも色の持つ相互作用に納得させられる。

 

アール・ヌーヴォーデザインをベースにしたヴェルデ建築の校舎とモダンなバウハウスデザインとのギャップ、違和感みたいなもの…

概念はあるがどうしたら それを形にできるのかと模索しているような空気、良い意味でまだ統一されていない当時の実験的な挑戦、情熱や衝動みたいなものを感じて何だか心がいっぱいになる。

 

どんな完璧に見えることも、突然完成するものではないのだ。

 

 

校舎を出て目の前の大きな公園を散歩する。

雨が降ったり晴れたり忙しい天気とは裏腹にゆったりと大きな樹々が風に揺れる。

雨に濡れた緑の匂いが濃く香る。

 

 

ヴァイマル校舎で見たことや感じたことを頭の中でぐるぐると反芻しながら想いがいっぱいになった胸に空気を入れるように深呼吸をする。

この旅のパートナー”La Maison de Lyllis”のデザイナー葛西さんとはいつの間にか距離を置いて歩いていた。

何も話していないのにこの時2人とも何故だか涙が出そうになっていたのは、偶然ではなく見たものにそれぞれ感じさせる何かがあったからだと思う。

 

途中、サイクリングをするグループとすれ違う。

ドイツは電車に自転車を乗せられるようになっていて、自転車で移動する人をよく見かける。

このシステムがあれば、きっと休日の過ごし方に幅が出るだろう。自転車の生活への取り入れ方は、道の整備も含めて是非日本でも取り組んで欲しいことの1つだ。

 

大自然の中を愛車で駆け抜けて、芝生でゴロンとしながら本なんて読めたら健康的だし最高の休日だな、なんて想像してドイツの人達が羨ましくなる。

 

 

公園の中には、ハウス・アム・ホルンというバウハウス設立4周年の展覧会の目玉として作られた実験住宅がある。

当時は古典的な装飾主義デザインが主流で、バウハウスのシンプルで装飾を削ぎ落としたデザインは市民権を得ておらず、一般庶民からはかなり奇異に写っていたらしい。

100年後、ほとんどのデザインがバウハウスをベースにした世の中になるなんてその時の庶民には信じられないだろう。

 

 

そんな主流を変えるためにプレゼンテーションも兼ねて作られたこの住宅。

計画ではこの辺りを、バウハウス式の住宅地やキャンパスの分家として活用しようとしていたらしいが、その後台頭した右翼政治によって予算は取り上げられ頓挫。

もし実現していたらきっと面白い場所になっていた だろうと思うと残念である。

家の中は、それぞれのデザイナーが担当していて、部屋ごとに印象が少しずつ違っていて面白い。

 

こじんまりとしていながら、窓の配置による光の入れ方で広々と見える。

リビングを中心に回遊できる部屋の配置プランも使い勝手が良さそうだ。

ドアや窓枠の色、ライトやドアノブのデザインなど、細かな場所にもスタイルがある。

 

 

ヴァイマルでは教鞭をとっていないが、後にバウハウスの3代目校長となった建築家ミース・ファンデル・ローエの名言“神は細部に宿る“を随所に感じる。

 

またキッチンの無駄のないデザインや機能性は、システムキッチンの基礎となったと言われているそう。

これは女性デザイナーがデザインしたと聞いて納得。明るく使い勝手の良さそうなキッチンだ。

 

 

リビングと女性の為の部屋にはマルセル・ブロイヤーがデザインした家具が配置されている。

 

スチールパイプを使用した名作椅子ワシリーチェアをデザインする前、ドレッサーなんかは構築的ではあるけれど意外にもごちゃっとしていて、ブロイヤーの削ぎ落としたデザインの完成前夜といった空気を感じて面白い。

 

 

バウハウスの設立宣言から6年後の1925年にヴァイマル校は閉鎖を余儀なくされる。

ここでの6年間は合理主義、機能主義な考えと表現主義的な考えがミックスされた概念で、芸術へのアプローチがされていた。

6年の歳月の中で新しいメンバーが招集され、少しずつ方針も変わり去っていく者もいた。

デッサウに移転してからは、より合理主義、機能主義的な教育方針になっていったそうだ。

ヴァイマールはどこか情緒的で、バウハウスが完成形へと近づいていく葛藤の歳月がギュッと詰まった場所だったように思う。

 

 

ヴァイマルで見た壁画のカラーコンビ ネーションの美しさをインスピレーションにデザインしたニットシリーズがこちら。

アームウォーマーとビスチェは取り外し可能、プレイフルで自由な着こなしが出来るニットデザインに落とし込んだ。

 

Armor&Baretop Layer knit   ¥37,400

 


 

シュレンマー壁画の階段にあったセージグリーンのカラーは脇役的な存在だったにも関わらず帰って来てからも頭に残っていた色だったので、シーズンのキーカラーにした。

ざっくりしたニットやメンズライクなギャバジン、透け感のあるシフォンなど質感の違う色々な素材に色をつけた。

 

2way Drivers Cardigan    ¥63,800

 

LEFT    Coated Tweed Chester Coat    ¥198,000

 

LIGHT   Reversible Collarless Jacket     ¥90,200

 


 

さて、電車に乗りバウハウスが全盛期となったデッサウへ。

 

Next Journey to Dessau. →Vol.4

 

 

24.Oct.2023

23 Autumn&Winter Collection VOL.2

 

 

“Vividly emotional journey”

 

 

 

世界中で美しいものを探すために旅を重ねる。

それらは、より良いマテリアルを見つける旅でもあり、

時代のムードを感じる旅。

 

コロナでのパンデミックを経て約2年半振りに出た旅。

2週間に渡ってフランス〜スイス〜ドイツを巡り、

何を見て、何を感じ

それをどのようにコレクションに落とし込んだのか。

デザイナー塚崎恵理子の旅の記憶。

 

 


 

 

VOL.2

“One day’s fantasy in Switzerland”

 

 

 

初めて降り立つスイス。

まずチューリッヒからザンクト・ガレンという小さな山間の街へ。

到着した途端に現れたクラシックな駅舎やいかにも歴史ある山間の街といった美しい風景に感動。

 

 

一瞬でこの街を好きになる。

 

 

フランスから直接ドイツに行かず欲張ってスイスに立ち寄った目的はレース。

 

ここザンクト・ガレンには1886年に設立された歴史あるテキスタイルミュージアムがあり以前から行ってみたいと思っていた場所だったのだ。

 

 

小さな街のサイズに合わせたような可愛らしいサイズのミュージアムには、デザイナー達のインスピレーションの源になるように…と集められた美しいレースや刺繍の古い図案や刺繍機など、涎ものの歴史的資料がぎっしり。

 

 

残念ながらちょうど訪問時は展示準備中だったけど、面白そうな衣装やテキスタイルの企画展示もやっている。

ライブラリーも服飾に関する面白い書籍が沢山でまるで時間が足りない。
それでも目一杯インプット。

ヨーロッパレースの夢ある奥深い世界に浸る内容濃い時間を過ごすことができた。
今回のコレクションではレースは扱わなかったが、これはいつかの為の脳内ストックに…。

ザンクトガレンがとても素敵な街だったので再訪を誓い、後ろ髪引かれながら電車に乗り込みチューリッヒへ戻る。

 

 

 

チューリッヒはスイス最大の都市でありながら、湖があり川が流れていて、あまり高い建物がないからかゆったりとした空気を感じる。

街を歩けば小さいけれど魅力的なギャラリーやフラワーショップが立ち並び、なんだか生活の豊かな時間を感じさせる洗練された瀟洒な街。

 

まずは、オートクチュールメゾンでも扱われるようなゴージャスで美しいテキスタイルを手掛けるスイスの生地メーカー“Jacob Schlaepfer“のショップへ。

 

街角にある小さなショップ内にはレースや刺繍、スパンコール使いやジャガードなど発想力と技術が爆発したテキスタイルが所狭しとディスプレイされていてあれもこれも素敵で目移りしてしまう。

聞けばこれはFENDIでこれはCHANELの先シーズンのもので…など普段お目にかかれないような超ゴージャスな素材ばかり。
メーター数万円の素材も少量からカット売りしてくれるので、気に入ったものをカットしてもらい、こちらも脳内にストック、ストック。

 

 

スイス最後の訪問先は…

 

チューリッヒ湖の湖畔にあるLe Corbusier晩年の建築、Le Corbusier Pavillionへ。

 

大きな窓からはたっぷりと光が入り、コンクリート素材と木材をミックスして大胆な色を効果的に配した空間はどこをとっても絵になる。

 

 

コルビジェの絵画が描かれた壁をスタッフの方がいたずらっぽい笑顔を浮かべて押すので、なんだろうかと思ったら扉になっていてびっくり。

 

庭にダイレクトにアクセスできるユニークでなんて魅力的なデザイン。

屋上にはリズミカルなデザインが印象的な屋根のあるバルコニー、地下には天窓の光がアクセントになった落ち着いて色々と考える時間を持てそうな書斎。
キッチンは広々としていて庭が目の前に広がり料理も楽しくできそう…と

 

想像力という妄想が掻き立てられる。

こんな場所に住んでみたいというのは贅沢過ぎるなら、せめて一泊させて欲しいと思うのは…

 

きっと私だけではないはずだ。

 

次回はチューリッヒから陸路でドイツへ…

この旅一番の目的地であるバウハウス関連の街へ。

 

 

 

Next Journey to Germany → JOURNAL Vol,3

 

 

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22.Sep.2023

23 Autumn&Winter Collection VOL.1

 

“Vividly emotional journey”

 

 

 

世界中で美しいものを探すために旅を重ねる。

それらは、より良いマテリアルを見つける旅でもあり、

時代のムードを感じる旅。

 

コロナでのパンデミックを経て約2年半振りに出た旅。

2週間に渡ってフランス〜スイス〜ドイツを巡り、

何を見て、何を感じ

それをどのようにコレクションに落とし込んだのか。

デザイナー塚崎恵理子の旅の記憶。

 

 


 

 

VOL.1

“Beautiful things in France”

 

 

長い空の旅を経て、まず最初に向かったのはフランス。

渡航制限が緩まり、仕事でポルトガルを訪れたのがきっかけとなり、私の旅熱は一気に火が付いた。

やっとこの時が来た!

 

パンデミック前には年に1、2度は訪れていた馴染み深いパリ。

まずは肩慣らしも兼ねて慣れ親しんだ国から久しぶりの海外の旅を始めようとパリを最初の旅先に選んだ。

 

 

Bonjour!とプチホテルのマダムが元気に挨拶してくれる。パリらしくて可愛らしい中庭のあるホテル。早朝からチェックインさせてくれて幸先も良し。出発前にパリに住む方に治安の悪化なども聞いていたので、私は少し緊張気味に街へ出た。

朝の乾燥したキリッと冷たい空気が心地良い。およそ2年半の時間が馴れ合いを絶ってくれたようで、街角のカフェで食べるクロワッサンとカフェクレームの朝食ですら新鮮で楽しく感じる。

 

数時間で緊張は何処へ、高揚感にとって変わり旅の1日目をスタートすることができた。

 

まず訪れたのは郊外の蚤の市。

パリ北部にあるパリ最大の蚤の市クリニャンクールやヴァンヴの蚤の市は時間が合えば必ず訪れる大好きな場所。久しぶりの宝探し感覚でワクワクしながら、いつも行くお店や新しいお店も2日に渡ってゆっくり時間をとって訪れた。

 

 

その中で見つけた30年代のチュールの端切。チュールの上に美しくシックなスパンコールとビーズをあしらった控えめながらも美しい刺繍は黒一色でまとめられていてとてもシック。見つけた瞬間に心射抜かれて購入。

実はこの日、クリニャンクールに行く前にルーヴルの装飾美術館で開催されていたSchiaparelliの展示を観ていて、その美しい手仕事とクリエーションに感動していたので、引き寄せられたとも言えるかもしれない。

モノやヒトとの出逢いには必ず流れというものがあるものだ。

日本にも貴重なアンティークやヴィンテージを扱う良店は沢山あるし、今は画面上でなんでも擬似体験できたり情報や写真を見ることはできる。確かに、これはこれで便利なのだが…私はやっぱりそれじゃ足りなくて、現地に足を運んで自分で見て触れて選ぶ事で想像が何倍にも膨らんでストーリーができていくタイプ。

いかにそういうことが自分にとって大事なことなのかを再認識させられる。

Schiaparelliの展示

今回蚤の市で出逢ったアンティークの端切れは、時代を超えて現代に受け継がれるインドの手仕事にて見事に再現する事が出来た。 そしてその素材を日本で、繊細な刺繍に気遣いながら丁寧に縫製してもらって出来上がったアイテムがこちら。 

ノーカラーのシャツのようなデザイン。後ろ開きにして前後でも着用可能。インナーとしてレイヤードしてもシャツやアウターの上からレイヤードしても。透け感と美しい刺繍を楽しんでスタイリングのプラスワンに。

A2533FB212   ¥74,800        Spangle Sheer Shirt

 

ラップスカート。パンツやスカートの上からレイヤードして着用できるアイテム。ワンショルダー風に着たりホルター風に着たり、1枚の布なので、どう着るかで雰囲気の変えられる楽しいアイテム。

A2533FS214    ¥74,800      Spangle Sheer wrap skirt


 

そして、次に向かったのは織物の街LYON。

夜が明ける前にホテルを出る。

パリからブルゴーニュ地方の長閑な田舎町を横目にTGVで2時間ほど南下した場所にあるリヨンへ向かう。ここは、古くから織物の街として栄えた場所。今では美食の街としても有名なローヌアルプ地方の観光拠点でもある。

今回は、以前からお世話になっている生地メーカーである“BUCOL“社を訪問するために訪れた。 1924年の創業当初からオートクチュールの伝統的デザイナーと共に創られた素材の数々はもはや芸術品とも呼べるレベル。

HERMES、CHANEL、DIOR、Dries Van Nottenなど数々のメゾンのデザイナーのクリエーションを支え、ファッションの歴史を紡いできた老舗メーカーのプライドを感じる。現在はHERMESグループの傘下でもあるBUCOL。HERMESはフランスの真摯な物作りを途絶えさせないために小さな企業や工房を傘下にして守るという方法をとっているそうだ。

BUCOLの工房では、HERMESシルクスカーフの代名詞Carreを生産していた。

昨年完成したばかりだという新しいオフィスでは人が集まるようなワンブレイクスペースが所々にあり、自然とコミュニケーションの取れるような明るく良い雰囲気。

広々とした社員食堂にはテラス席もあり、気持ち良い空間で私達もランチをいただく。 青空の下、美味しいランチを頂きながらここで働けたら幸せそうだなぁと素直に感じる。 革新をしながら人々の幸せや文化を担う企業の姿勢がまた魅力なのだと改めて感じた。

 

徹底したクリエーションと生産、管理された圧巻のアーカイヴ、クリエーションの為の貴重な資料をデザイナーさんに見せてもらう幸せな一日を過ごすことができた。

時間をかけ、膨大な素材のアーカイブの中から選んだ美しいジャガード素材はゴールドとシルバーのラメ糸を織り込んだフラワーパターン。ジャージのような軽さとストレッチ性も兼ね備えた不思議な質感は、ストレッチを入れることで独特の凹凸感を出しているそう。

中々日本では見たことのない技術にインスピレーションを掻き立てられる。

ラメの色などもどんな物が使えるかなど打ち合わせをして選定。 出来上がったのは、BUCOLならではのエレガントでありつつもエッジの効いたムードの素材。 古い資料から選んだので再現が難しかったようで、ギリギリまで粘ってなんとか展示会に間に合った。

日本の素材、フランスの素材、イタリアの素材…同じ織物でも国によってムードが違う。糸の本数、染色の技術、織機の性質、フィニッシュの具合・・・究極は水質すら関係してくる。気が遠くなるほどの工程を経て作られる生地だからこそ。

それぞれに良さがあるので、出したい雰囲気で作ってもらう場所を選ぶ。 本当にちょっとしたことがその洋服が纏う空気を作るから服作りは奥深くて楽しいのだ。

 

今回BUCOLのファブリックを使用したアイテムフリルカマーベルト付きタイトスカート。フロントスリットでも着ることが出来ます。カマーベルトはトップス風に着たり、スタイリングをじ自由に楽しめます。型によってはリバーシブルでも楽しめます。

A2533FS225      ¥104,500

Next Journey to Swiss  → JOURNAL Vol.2

 

06.Apr.2023

It’s my vintage VOL.4

 

 

 

Living  in  the  here  and  now,

connecting  dots,

that  lead  to  you,

to  a  vintage

that  you’ve  made.

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「いま、ここ」を生きる

点の連続が、

あなたと時を繋ぎ

あなただけの

ヴィンテージを生む


 

〜受け継がれながら育てていく服〜

 

CURRENT+VINTAGE の造語であり、 CURRENT+AGEの造語である”CURRENTAGE”
世代や時代を越えて、価値のあるものとして受け継がれていくVINTAGE 。
時代を越えても尚愛され続けるものには理由がある。

 

普段のスタイルとしてVINTAGEを取り入れ、卓越した審美眼を持っている方々に、CURRENTAGEの今+自身のVINTAGE を組み合わせて、それぞれのスタイルでCURRENTAGEの服を表現してもらいました。

 


 

 

VOL.4

 

YOSHIMI NAGAO

FREELANCE CREATIVE  DIRECTOR

 

 

 

ー今までの経歴と現在のお仕事内容教えてください

 

地元北海道の高校卒業後から30歳まで札幌のセレクトショップでショップスタッフとして勤務。

2011年に上京し、都内店SHOPスタッフを経て、2012年より髙島屋STYLE&EDITのバイヤー&ディレクターとして勤務。

2022年からは独立し、フリーランスとしてクリエイティブディレクター、ブランドとのコラボや、セレクトショップバイヤー、ブランドアドバイザーとして活動中。

 

ーいつから古着を購入するようになりましたか? また、きっかけなどあれば教えてください。

 

小学校高学年くらいから古着に興味を持ち始め、お年玉を持って地元の古着屋さんに買いに行ってました。

親のクローゼットにあるリーバイスや70s vintageアイテムを掘り出してこっそり着たり。

 

 

 

ー自身が影響を受けた事や年代などありますか? (ex.映画、著名人や音楽など)

 

70年代の自由なファッション。

あとは90年代のケイトモス!!

当時の雑誌mc.sister oliveからも影響を受けました!

 

 

ーヴィンテージの魅力や好きな理由を教えてください

 

人と被らないところ。

また、素材やディテールの美しさがオリジナリティあり、ファッションの発想を豊かにしてくれるところが好きです。

 

 

ー古着はクローゼットの中のどれくらいを占めてますか?

 

7割くらい?

 

 

ー今回のスタイリングのポイントを教えてください。

 

CURRENTAGEらしくmix感あるスタイリングを意識しました。

 

 

ーこのアイテムのお気にりのポイントを聞かせてください。

 

シンプルで胸元と背中のラインが女性らしく、BASICなボーダーとのギャップが素敵。

それをボディースーツというハイセンスなアイテムに仕立てたところが好みです!

 


 

 

ー今気になっている年代やアイテムはありますか?

 

vintage デニムの世界が改めて気になっています。

 

 

 

ー古着以外のモノを購入する場合はどんなことがポイントになりますか?

 

ファブリック!!

 

 

ー今回のスタイリングのポイントを教えてください。

 

CURRENTAGEの光沢感あるブラックのサロペットパンツにメンズのvintage shirtを合わせて、やんちゃさと色気を意識したスタイリング。

シンプルでラフな合わせに小物使いで遊んでみました。

 

ーこのアイテムのお気にりのポイントを聞かせてください。

 

光沢感のある素材のBLACKと、マスキュリンさを引き立たせる太めのストラップとのバランスがモードで素敵です。

 

 

ー自分を表現する上でファッションとして意識している事や、 これからのファッションに期待している事などあれば教えてください。

 

品があって、 飾らないスタイルができる女性になれる様に内面を磨く事。

着たい物が着たいバランスで着れる様に体型を維持する努力。

多様性に対応し、楽しく循環しながらも新たなカルチャーが生まれる、今後のファッションの世界に期待。

 

 

 


 

ー最後に、お気に入りヴィンテージアイテムを教えてください。

 

 

ー千駄ヶ谷にある古着屋toro vintageで購入したヴィクトリアン時代のtops

100年以上前に作られたディテール、カラー、ファブリック全てが興味深く、スタイリングの妄想を掻き立てる服に一目惚れしました。

 

 

ー数年前の大江戸骨董市でトルコ絨毯屋さんで購入した物。

気が狂いそうなくらい細いハンドメイドステッチ。

魅惑的なカラーリングと美しいファブリック。

本当ならば3040万と言われたけど、交渉の末、所持金15,000円の私に似合うからいいわよ!と売ってもらいました。着用機会が少なくてもオンリーワンの宝物。

 


 

NAGAO YOSHIMI ( @yoshiminagao

 

「髙島屋」のウィメンズクリエイティブディレクターを務め、他社セレクトショップなどのコンセプターも兼任。2022年からはフリーランスとなり、フリーランスクリエイティブディレクターとして活動中。ファッションを軸に、インテリアや食器などのライフスタイルまで、さまざまなジャンルで造詣の深い彼女のスタイルは、感度の高い女性から絶大な支持を得ている。

 

 

-POPUPのお知らせ-

 

「2023 SPRING/SUMMER  CURRENTAGE POPUP」 

場所:新宿高島屋 「STYLE&EDIT」

期間:4/12(水)〜4/25(火)

 



 

今回着用して頂いたアイテム

A2531KSW002  ¥25,300

 

A2531FP213  ¥44,000

 

 

CURRENTAGE   ONLINE STORE

 

 

 

30.Mar.2023

It’s my vintage VOL.3

 

 

 

Living  in  the  here  and  now,

connecting  dots,

that  lead  to  you,

to  a  vintage

that  you’ve  made.

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「いま、ここ」を生きる

点の連続が、

あなたと時を繋ぎ

あなただけの

ヴィンテージを生む


 

〜受け継がれながら育てていく服〜

 

CURRENT+VINTAGE の造語であり、 CURRENT+AGEの造語である”CURRENTAGE”
世代や時代を越えて、価値のあるものとして受け継がれていくVINTAGE 。
時代を越えても尚愛され続けるものには理由がある。

 

普段のスタイルとしてVINTAGEを取り入れ、卓越した審美眼を持っている方々に、CURRENTAGEの今+自身のVINTAGE を組み合わせて、それぞれのスタイルでCURRENTAGEの服を表現してもらいました。

 


 

 

VOL.3

 

HIROKAZU  KINBARA

  DIRECTOR/DESIGNER

 

ー今までの経歴と現在のお仕事内容教えてください

 

長年テキスタイルデザイン会社にて企画営業に従事し、コレクションやメゾンブランド、セレクトショップを担当。現在はアパレル会社にてテキスタイルデザインチームを運営しながらトレンド予測やブランドのディレクター兼デザイナーを兼任している。

 

ーいつから古着を購入するようになりましたか? また、きっかけなどあれば教えてください。

 

自分でお洋服を購入するようになった大学時代に、ギャルソンやヨージなどの日本のモードブランドに夢中になり、その後、モードとデニムを合わせるスタイリングにハマり始め…第一次my古着ブームがスタート。

That’s 80s!

 

 

ー自身が影響を受けた事や年代などありますか? (ex.映画、著名人や音楽など)

 

母が、僕に服を選んで着せていた60年代後半から70年代が、DNAにすりこまれている。

ミーハーなので、好きなものは、常に更新、刷新している。

 

 

ーヴィンテージの魅力や好きな理由を教えてください

 

時代が移行して変わって行く価値。

様々な時代のクリエイションが、新しい時代にもマッチしてくる瞬間が好き。

全てのクリエイションには、生まれた理由があり、それに関わったパーソンがいた意味があったんだと認識できる瞬間がハッピーだから。

 

 

ー古着はクローゼットの中のどれくらいを占めてますか?

 

今は50%くらい?

 

ー今回のスタイリングのポイントを教えてください。

 

僕なりのフェミニティー

 

 

ーこのアイテムのお気にりのポイントを聞かせてください。

 

カレンテージの真骨頂である、フリーダムな2way!

(自由に着て!なのにカジュアルになりすぎないバランス)

 

 

 


 

 

ー今気になっている年代やアイテムはありますか?

 

たくさんのルールを変えようとしてもがいていた60s70sのクリエイションと、同じような空気感でカオスとなっていた90s

 

 

 

ー古着以外のモノを購入する場合はどんなことがポイントになりますか?

 

クリエイションの熱量!!

 

ー今回のスタイリングのポイントを教えてください。

 

アメリカンルーラルとカラースタイル(カレンテージのピンクとオーバーオールのブルー)

 

 

ーこのアイテムのお気にりのポイントを聞かせてください。

 

こちらもカレンテージの真骨頂である、後ろ姿の美しさ。

 

 

ー自分を表現する上でファッションとして意識している事や、 これからのファッションに期待している事などあれば教えてください。

 

意識しているのは、自分が楽しくあること。 今日1日を楽しく過ごせること。

これからのファッションに対しても、熱量を持ってクリエイションにむかいあうこと。

 

 


 

ー最後に、お気に入りヴィンテージアイテムを教えてください。

 

 

ーHermes Bangle

初めて行ったハワイで、30歳の記念に買ったアイテム。その後、このシルバーのカットワークの技術が継承されていないことを知り、自分がこれを大切に次の時代に残したいと思ったこと。(僕がこの技術を復活させることはできないけれども、何世代先でも「作りたい」と思うクリエイターの手に届くまで、様々な人に繋いでいってもらいたい。すごく夢がありませんか?笑)

 

 

 

ーHarrods Old Scool Blazer 

ハロッズで仕立てられた、男児のスクールブレザー。オーダーメイドと言う時代の空気が品を作り出しているところがお気に入り。

 


 

KINBARA  HIROKAZU ( @kin.summer.summer

 

長年テキスタイルデザイン会社にて企画営業に従事し、コレクションやメゾンブランド、セレクトショップを担当。現在はアパレル会社にてテキスタイルデザインチームを運営。

また2023春夏、新ブランド「crinkle crinkle crinkle(クリンクル クリンクル クリンクル)」を立ち上げ、ディレクターとして従事。その時々に感じる感覚を素直に自由に魔法をかけるように表現するブランドとして、コットンやシルクなどの天然素材を使い、自分らしく纏える、愛に溢れた服を提案。

 

「crinkle crinkle crinkle」 Official Web

 


 

今回着用して頂いたアイテム

A2531FJ215    ¥50,600

 

A2531FB208  ¥39,600

 

 

CURRENTAGE   ONLINE STORE

 

 

 

23.Mar.2023

It’s my vintage VOL.2

 

 

 

Living  in  the  here  and  now,

connecting  dots,

that  lead  to  you,

to  a  vintage

that  you’ve  made.

 

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「いま、ここ」を生きる

点の連続が、

あなたと時を繋ぎ

あなただけの

ヴィンテージを生む


 

〜受け継がれながら育てていく服〜

 

CURRENT+VINTAGE の造語であり、 CURRENT+AGEの造語である”CURRENTAGE”
世代や時代を越えて、価値のあるものとして受け継がれていくVINTAGE 。
時代を越えても尚愛され続けるものには理由がある。

 

普段のスタイルとしてVINTAGEを取り入れ、卓越した審美眼を持っている方々に、CURRENTAGEの今+自身のVINTAGE を組み合わせて、それぞれのスタイルでCURRENTAGEの服を表現してもらいました。

 


 

 

VOL.2

 

TOMOKA  NAKA

  CALLIGRAPHER

 

ー今までの経歴と現在のお仕事内容教えてください

 

社会人として、ウェディング、アパレルを経験し、”自分らしくいれる時間=書道と向き合っている時”であると再認識し、2019年に書道家として独立。個展やオーダー制作、ワークショップの開催からブランドコラボレーションなどを行なっています。

 

 

ーいつから古着を購入するようになりましたか? また、きっかけなどあれば教えてください。

 

元々はモードなスタイル一択でしたが、歳を重ねるごとにもう少し片肘張らずに楽しみたいと思うようになり、古着を最新のものにミックスするようになりました。想像以上に今の自分にしっくりきて、古着の魅力にどハマりするようになりました。

 

 

ー自身が影響を受けた事や年代などありますか? (ex.映画、著名人や音楽など)

 

1991年のアメリカ映画”Thelma and Louise” が好きです。
劇中のウエスタンアイテムやデニムスタイルに魅力を感じました。

 

ーヴィンテージの魅力や好きな理由を教えてください

 

本格的にvintageというものに手を出したのはLEVISの501BIG Eです。
その当時の年代ならではの色落ちや、ダメージによる雰囲気がたまらないです。

 

 

ー古着はクローゼットの中のどれくらいを占めてますか?

 

今や半分弱は古着かもしれません。

 

 

ー今回のスタイリングのポイントを教えてください。

 

お気に入りのウエスタンブーツを取り入れたワークスタイルです。
ワントーンなスタイリングですが、素材の異なる雰囲気の漂うアイテムを組み合わせることで、それぞれのアイテムの奥行きや、動きを出してみました。ボルドーのウェスタンブーツはどのスタイルにも味付けをプラスしてくれるので重宝しています。

 

 

ーこのアイテムのお気にりのポイントを聞かせてください。

 

肌馴染みの良いナチュラルな色で、立体的なゆったりとしたシルエットとリネンの素材感が、春の心地よい気分をかきたててくれるアイテムでした。
どんなスタイルにも取り入れやすくワードローブにあると非常に便利なアイテムです。

 


 

 

ー今気になっている年代やアイテムはありますか?

 

夏に向けてバンドT、ムービーTなど常に好みのものがないかと高円寺や、下北沢を渡り歩き探しています。

 

 

ー古着以外のモノを購入する場合はどんなことがポイントになりますか?

 

ブランドやアイテムの背景に魅力を感じたり、年々長く身につけられるアイテムを選ぶようになりました。

 

ー今回のスタイリングのポイントを教えてください。

 

マイ定番を取り入れたアメカジMIXスタイルです。
マイサイズそして今やマイ定番のAJ1シカゴ。この組み合わせは私のお気に入りスタイルです。
今回は、CURRENTAGEのアイテムを加えることでラグジュアリー要素も入り、異素材のバランスが絶妙で私自身も新鮮な気持ちでスタイリングを楽しませていただきました。

 

ーこのアイテムのお気にりのポイントを聞かせてください。

 

光沢のある素材感がドレッシーで、エレガント且つ女性らしさをプラスしてくれる。シンプルなアメカジスタイルが多い今の私の気分にはピッタリのアイテムでした。
今回はジュエリーで遊びを加えてみましたが、無造作な着こなしも可愛いと思います。

 

ー自分を表現する上でファッションとして意識している事や、 これからのファッションに期待している事などあれば教えてください。

 

タイムレスで長く評価されるものは本当に良いものだと思います。その中で自分らしさ、その時の自分を高めてくれるものを身に付けたいと常々思います。

 

 


 

ー最後に、お気に入りヴィンテージアイテムを教えてください。

 

ーLEVI’S 501 BIG E

高円寺の古着屋を渡り歩き出会ったマイサイズ。色落ちとダメージのこなれ感、雰囲気に一目惚れして購入したものの、履くことに若干の抵抗もありました。でもリペア等を施したことで、より愛着も沸き大切に履いているデニムです。

 

ー1994’s  NIKE Air Jordan1 ‘CHICAGO

こちらのAJ1シカゴはオリジナルの発売後、初めて復刻された1994年製です。小学校の頃、学校代表としてバスケットボールの試合に出場できることになったので、親にねだっていたもので、当時は手に入れられませんでしたが、その頃からずっと憧れのスニーカーでした。

 


 

NAKA  TOMOKA ( @_naka.tomoka )

社会人として、ブライダル、アパレル業界を経験する中で、自分らしくいれる時間=書道と向きあっている時であると再認識し、正筆会師範を取得。同年、更なる活動の場を求め、拠点を東京へ。

伝統的な文化である書道をより身近な存在へと感じてもらえるよう、ファッションというフィルターを通し、独自の書風で表現する。

 

NAKA TOMOKA  Official Website

 


 

今回着用して頂いたアイテム A2531FJ222    ¥53,900

 

A2531FB205  ¥81,400

 

 

CURRENTAGE   ONLINE STORE

 

 

 

16.Mar.2023

It’s my vintage VOL.1

 

 

 

Living  in  the  here  and  now,

connecting  dots,

that  lead  to  you,

to  a  vintage

that  you’ve  made.

 

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「いま、ここ」を生きる

点の連続が、

あなたと時を繋ぎ

あなただけの

ヴィンテージを生む


 

〜受け継がれながら育てていく服〜

 

CURRENT+VINTAGE の造語であり、 CURRENT+AGEの造語である”CURRENTAGE”
世代や時代を越えて、価値のあるものとして受け継がれていくVINTAGE 。
時代を越えても尚愛され続けるものには理由がある。

 

普段のスタイルとしてVINTAGEを取り入れ、卓越した審美眼を持っている方々に、CURRENTAGEの今+自身のVINTAGE を組み合わせて、それぞれのスタイルでCURRENTAGEの服を表現してもらいました。

 


 

 

VOL.1

 

CHISATO  TABUCHI

  VINTAGE SHOP (TARP_OBJECTS)

OWNER

 

ー今までの経歴と現在のお仕事内容教えてください

 

初めはヴィンテージディーラーでバイヤー勤務したのち、青山のヴィンテージショップにて販売職を経験しました。 2021年冬に世田谷区三宿にvintage shop『TARP』をOPENし、ようやく一年が経過しました。

 

ーいつから古着を購入するようになりましたか? また、きっかけなどあれば教えてください。

 

学生の頃海外に住んでおり、週末にフリーマーケットに行く習慣から古着に興味を持つようになりました。

 

ー自身が影響を受けた事や年代などありますか? (ex.映画、著名人や音楽など)

 

ディーラーに勤務していた時、海外を拠点としていた事です。

日本と異なるヴィンテージの解釈があり、正しいルーツを踏まえた上で個々にファッションを楽しむマインドに惹かれました。

 

 

ーヴィンテージの魅力や好きな理由を教えてください

 

常に新鮮な驚きと感動を与えてくれるところが好きです。

ー古着はクローゼットの中のどれくらいを占めてますか?

 

9割くらいクローゼットを占めています。

 

 

ー今回のスタイリングのポイントを教えてください。

 

限られた色の中で質感やシルエットをたくさん詰め込みました。

 

 

ーこのアイテムのお気にりのポイントを聞かせてください。

 

繊細なレースのモチーフだけど、ボックスシルエットでゆとりもありレイヤードの想像が膨らみます。

 

 


 

 

ー今気になっている年代やアイテムはありますか?

 

ジュエリーが気になりますね。新旧や国を問わず、アーティストの独自性がある物に惹かれます。ずっと身に付けられる、自分にとってお守りのようなジュエリーを探したいです。

 

 

 

 

ー古着以外のモノを購入する場合はどんなことがポイントになりますか?

 

生産背景やリファレンスが気になります。また、10年先の自身のクローゼットに留まるかどうかを考えながら購入します。

 

 

ー今回のスタイリングのポイントを教えてください。

 

スカートの華やかな色彩と同じベクトルのアイテムを重ね、プレイフルなスタイルを目指しました。

 

 

ーこのアイテムのお気にりのポイントを聞かせてください。

 

とにかく色とテキスタイルが可愛いです。シアーな質感の生地が現代的で、 柄や色を掛け合わせてもほっこりしないです。

 

 

ー自分を表現する上でファッションとして意識している事や、 これからのファッションに期待している事などあれば教えてください。

 

ヴィンテージはそれぞれの国や年代における社会背景やカルチャーに強く結びついているので、ファッションとしての側面だけではない部分をお店を通して伝えていきたいし、体現出来たらと考えています。また時の流れに応じてヴィンテージの定義は刷新されているので、そういった変化を自身も柔軟に楽しめればなと思います。

 

 


 

ー最後に、お気に入りヴィンテージアイテムを教えてください。

 

ー1930’s Lace cape(TARP shopで販売中)

アノニマスな物ほど、細やかな手仕事やディテールにハッとします。

 

 

ー1980’s ALAÏA, Over shoulder jacket(上)

My first アライア。 どこを切り取っても女性的でパーフェクトなシルエットがとても大好きで、お気に入りです。

 

 

ー2002’s Martin Margiela、tabi shoes(下)

 メゾン初期の物です。

 


 

TABUCHI CHISATO ( @_tbc_cst )

ヴィンテージのディーラーやヴィンテージショップでの販売を経て、2021年に自身のshop 「TARP」をOPEN。アノニマスなモノからデザイナーズのヴィンテージまで、独自の世界観が魅力なヴィンテージショップ。

 

 

tarp_object

〒154-0004
東京都世田谷区太子堂1-1-13 3F
OPEN13:00-19:00   CLOSE 木曜日・金曜日

 


 

今回着用して頂いたアイテム A2531FB216    ¥74,800

A2531FS231    ¥52,800

 

CURRENTAGE   ONLINE STORE

 

 

 

03.Mar.2023

2023 Spring&Summer Inspiration

 

 

” MIXING FORM “

 

 

23SSのInspirationとなったのは、シチリア生まれのイタリア人女性アーティストCarla Accaedi.

 

Carla Accardi : Biography

Born in Sicily, artist Carla Accardi (1924-2014) lived and worked in Rome. 
Accardi’s groundbreaking exploration of the physicality of materials and the boundaries of space in her seminal sicofoil 
works – enamel painted on transparent plastic wrapped around stretcher bars – played a vital role in the Italian Post-War avant-garde. 
Together with her husband Antonio Sanfilippo and other artists such as Giulio Turcato, Piero Dorazio and Pietro Consagra, she formed the Marxist-inspired Gruppo “Forma 1. 
In 1970, she co-founded the Rivolta Femminile group with fellow feminist activists Carla Lonzi and Elvira Banotti. 
Since her first solo exhibition in 1950, Accardi’s work has been featured in numerous solo shows worldwide, as well as multiple presentations at the Venice Biennale.
 
シチリア生まれのアーティスト、カルラ・アッカルディ (1924-2014) は、ローマで活動しました。
アカルディの独創的なシコフォイル作品(ストレッチャーバーに巻き付けられた透明なプラスチックにエナメルを塗ったもの)における素材の物理性と空間の境界の画期的な探求は、戦後のイタリアの前衛アートで重要な役割を果たしました。
夫のアントニオ・サンフィリッポや、ジュリオ・トゥルカート、ピエロ・ドラツィオ、ピエトロ・コンサグラなどの他のアーティストとともに、彼女はマルクス主義に影響を受けたグループ “フォーマ 1“ を結成しました。
1970年には、彼女は仲間のフェミニスト活動家であるカーラ ロンツィとエルビラ バノッティと共にリヴォルタ フェミニレ グループを共同設立しました。
1950年の最初の個展以来、アカルディの作品は、世界中の数多くの個展や、ベネチア ビエンナーレでの複数のプレゼンテーションで取り上げられています。


Wikipedia: Carla Accardi

 


WORKS

Top Left: Rotoli (1966-1972)

Top Right: Bianco(1969)

Bottom Left: Grande capriccio viola (1988)

Bottom Right :Carla Accardi in her studio in Roma(1983)

 

 

 

Designer’s  comment

 

人間として、女性として周囲の環境との関係性や流動性のようなものを表現したCarla Accardiの作品。

人間がコミュニケーションを取るための手段である”文字”をフォルムとして捉え直した作品や、見えない空間性を表現したとされるプラスチックを使ったシコフォイル作品など、彼女の作品には強いメッセージ性を込めながら”絵画”の新しい価値を探る実験的なものが多い。

流れるような大胆な筆使いや彼女が新たに生み出したフォルムや素材使いはもちろん、シチリア、トラパニにルーツを持つ彼女ならでは色彩感は、独特の空気を纏っていて、直感的に私は魅了された。

モノクロームと大胆な色使いのコントラストは、シチリアを旅したときに感じた強い光と濃い影、底抜けの明るさと微睡を思い起こさせる。

フェミニスト運動家でもあった彼女の女性ならではの視点で捉えた空間性や関係性の表現の仕方も自由で大胆かつチャーミング。

そんな彼女の作品にインスパイアされて、制作されたオリジナル素材やプリント、美しいパターンフォルムで彼女の自由でエレガントな空気感を表現したコレクションに仕上げました。

 

 


 

Original Fabric  “VENTO“

彼女が繰り返し描いた流れるような流線を重ね合い、新たな色をつけてプリントにおこしています。

生地自体も凹凸感のあるチェック柄のドビー素材をオリジナルで作成。透け感のある軽やかなムードに仕上げています。

Gather long skirt   

STYLE NO: A2531FS231   ¥52,800

 

Standcollar gather blouse   

STYLE NO:A2531FB211 ¥50,600

 

 

Original Fabric  “ON DE MARE

Carla Accardiの切り絵のようなアート作品からインスパイアされたパターン。キャンパスに描いたような雰囲気にする為、リネンのナチュラルカラーをベースに使用。

ナチュラルになり過ぎないように適度なハリ感のある素材を選定しています。

Linen cotton print long skirt

STYLE NO:A2531FS220  ¥47,300

 

Linen cotton print blouse

STYLE NO:A2531FB219  ¥39,600

 

 

Original Fabric  “CARLA“

Carla Accardi自身が着ていたサマードレスの柄の雰囲気、彼女が文字を解釈し直して描いた幾何模様のようなパターンをミックスしてオリジナルパターンを作成。パネル状にプリントして生地を作成しています。

ドレープ感のあるレーヨンの質感はヴィンテージサマードレスのような雰囲気。パープルの効いたカラーリングも大人なムードに仕上がってます。

Geometoric pattern one-peace

STYLE NO:A2531FA225  ¥53,900

 

 

Original Fabric  “Gara“

フランスの蚤の市で見つけた20年代のフランスの刺繍ブラウスの刺繍柄をアレンジして北陸産地でオリジナル刺繍生地を作成。

レース部分にはフランス、リヨンで作られるMaison HURELのハイクオリティなレースを使用。

HURELはCHANELやDoir など数々のメゾンと協業して、由緒ある伝統とシックで洗練された美学を融合させたレースやシルク素材を開発している老舗メーカー。

美しいコード入りの繊細なレースとオーガンジーの刺繍素材の組み合わせがランジェリーライクなムードを纏います。

French lace skirt

STYLE NO:A2531FS217   ¥71,500

 

 

 

Special Fabric  “LimpidaTweed“

イタリア、ビエラ地区で生産されるTessilfantasy社のツィード。CHANELをはじめとするメゾンで使用される、常に新しさを追求する他にはない高品質な素材を生み出しているメーカーです。

今回のインスピレーションになったCarla Accardiの作品に繰り返し登場するような透明なビニール素材。

その質感のような透明の特殊な糸を伝統的なツィードに織り込んだ素材を別注しました。他にはないハイブリッドなツィードに仕上がっています。

質感を活かすために1つ1つハンドカット。縫製されたフリンジ仕上げをふんだんに施したアイテムはVintageになりうる贅沢な仕上がりになっています。

Limpida tweed jacket

STYLE NO:A2531FJ204  ¥140,800

 

Limpidatweed skirt

STYLE NO:A2531FS206      ¥88,000

 


 

CURRENTAGE ONLINE STORE

 

 

 

02.Dec.2022

-IT’S MY FRENCH- vol.3

 

 

“この気まぐれで奇妙な国”

 

vol.3

HIROMI KATO

THENN AROMATHERAPY 主宰

 

2022FALL/WINTER COLLECTIONのテーマ
“Cinématique“

Inspirationになったのは、”狂騒の時代”と言われた20’sのフランスや80’のフレンチニューシネマに生きたミューズ達。

自由にしなやかに、自身を信じて愛に生きる女性達はいつの時代も美しいもの。

今回は、CURRENTAGEにも関わりがあり、普段から多様に活躍する3人の女性達に”It’s my French=私にとってのフレンチ”を聞いてみました。

 

第3回目、ラストとなる今回は“THENN“として精油療法士、国際セラピストとして活動されている加藤広美さんにCURRENTAGEデザイナー塚崎恵理子がお話をお伺いしました。

 

 


 

 

ー共同作業で作られる香り

 

(塚崎恵理子=以下E)

ー広美さんは“THENN AROMATHERAPY“としてパーソナルブレンディングをメインに活動していらっしゃいますよね。

まずはそのセッションってどんなもの?と思われる方も多いと思うので、教えてください。

 

(加藤広美=以下H)

ーはい、私が提供しているPersonal Blendingのセッションでは、まず対面でカルテを記入いただき、心と身体の状態を確認します。カウンセリングをしながら、精油(エッセンシャルオイル)の持つ薬理と芳香、その両面から調合を考えてブレンドしていきます。

心身を整えるため、眠りの改善や不調の緩和、人生における節目や、新しい事をはじめる時に背中を押すものだったり、自分を知るためのきっかけであったりと、いらっしゃる理由は様々ですが、目的と体調に合う精油を選び、お会いして感じたご本人の印象と重ねて調合し、精油の香りでその方の肖像画を描く、というようなイメージです。

 

Eー自分の頭の中だったり心の中って、分かっているようで、分からない。認めたくない気持ちだったり、外に出したいんだけど、どういう風に形にして良いのか、言葉に置き換えて良いのか分からないということが私はよくあるんですよね。

物を作るにしても自分の中で整理をつけるために“取っ掛かり“みたいなものはやっぱり必要で。ひろみさんのセッションにはいつもその感覚を刺激されて、“取っ掛かり“を掴む助けをしてもらっているなと感じています。セッションの中で、あぁ、今私はこの香りが必要だな、と身体が反応するのですが、その理由は私には分からない。それに対して広美さんがお話してくれることが、そうそう!ということが多くて。いつも本当にすごいなと思っています。

 

Hーありがとうございます。人によってこういうセッションの相性が良い、悪いというのはあると思うんです。香りによって脳が刺激されることでパフォーマンスが上がるというのは、アロマテラピーの魅力の1つであると思うのですが、それはきっと、受け取る側の五感が研ぎ澄まされていることや、香りそのものに対して“自分にとって助けになる物“として信頼を置いているかどうかも重要な気がします。

一方通行では成り立たなくて、信頼関係あってこそだと思うんですよね。これがあればなんとかしてくれるだろうとか、これで○×は良くなりますか?という感じで思われる方もいらっしゃいますが、そういう風に“ただ何かを自分に与えてくれる物“だと思っている人にとっては、もしかしたら肩透かしかもしれませんね。見えないもの、よく分からない物、不思議なものだけど気になる、という方が、イマジネーションが膨らむのかもしれません。実際にセッションに来ていらっしゃる方にも、デザインや芸術など、色々なジャンルのアーティストの方は多いですね。

表現をお仕事にされている方を見ていて思うのが、アウトプットの多い毎日での栄養補給で、満足できる場所ってそんなに沢山は無いんだと。美味しい物を食べる、映画を観るとか色々あると思うのですが、そうじゃなく、もう少し目に見えない物、見えないんだけど何かを掴むということが栄養となる人。そういう栄養補給が必要という人っているんだと思います。えりちゃんも、香りを通じて何かを掴むのが得意な人だから相性が良いって言ってくれるのかもしれません。

 

Eー前提的に相性というのはありますよね。

セッションでは、沢山ある精油の中から今自分にとって必要な香りを見つけていきます。自分の香りに対する先入観だったり、逆に時には好きだった香りも全然欲さない、ということもある。たとえ沢山の香りを目の前に置かれたとしても、絶対に自分だけでは見つけられないと思うんです。それをカウンセリングのちょっとしたキーワードから与えてもらえるTHENN AROMATHERAPYのセッションはすごく贅沢な場所だなと本当に思います。

 

Hー共同作業みたいなところはありますよね。2人で確認しながら、こうかもね、こうなんじゃない?とか。

それで持ち帰って使ってみて、改めて腑に落ちたり、その後少し経ってからふと使ってる時に納得した!とか。

不思議なもので、後から答え合わせみたいなところも大きいのかな。

 

Eー確かに、先日のセッションがそうでしたよね。数日後に「あ、来ました!」みたいな(笑) ある意味では受ける側も身を委ねているから、ちゃんと与えてもらえるという部分もあるのかもしれないですね。

 

Hーやっぱり身体のことも気持ちの部分でも、開いてくれてるからということも大きいですね。「BODY」「MIND」「SPIRIT」よく“心技体“って言いますが、この3つが噛み合っていることが良い状態だと思います。

体が元気なだけでも駄目だし、気持ちだけやる気があっても駄目、精神と肉体と心というのが中庸のところにあって調和が取れていると、問題があっても冷静に考えられたり、全部を見渡せて判断できたりしますよね。

それはアロマテラピーがあるからどうこうということではなく、えりちゃんのコンディションとして大切なこと。

睡眠や食事と同じように、生活において大切なものの1つとして、コンディションを整える助けになってるということなんだと思います。

 

Eーコンディションが整うからこそ、頭の中に届いてコレクションのインスピレーションだったりに結びつくみたいなことに繋がっているのかもしれません。

 

Hーそうですね。あと、えりちゃんからはよくモヤモヤしてる時に開けた、みたいなこともよく聞くよね。

 

Eーそうなんです!

あぁ自分ってやっぱりこう思っていたんだ、これで間違いないんだ、とか。自分にとって答え合わせや確認みたいな意味合いも大きいですね。

 

 

 

 

 ー記憶と思考と香りの謎

 

 

Eー今回広美さんにお話を聞いてみたいと思ったのも、ちょうど22AWのコレクションの構想をまとめている最中に出会った広美さんが創られた香りがきっかけです。

その時、自分にとっては原点的な“フランス“というキーワードが頭にあって。

昔から好きな20年代のパリや80’s〜Early90’sのフランス映画だったりを辿り直している時期に、たまたま広美さんが作った甘い香りがビタッと来て。自分の中でインスピレーションやコレクションの世界観がその香りによって広がったんですよね。

なので、この香りを嗅ぐと年末に向かって慌ただしくなってきたコレクション制作の頃を思い出します。

ただ不思議なのが、広美さんはその香りをフランスというキーワードなんて全く考えずに調合していて、むしろCharritaの展示会で千尋さんの為に作った香りだったので、もしかしたらメキシコだったりを連想して作った香りだったのかなと思うんですよね。

私はなぜその香りからフランスが連想されて繋がったんだろう?というのが自分でも不思議で。

 

Hー香りから想起されるものっていうのはもちろんあるのですが、なんでだろうね?

調合に入っていた内容を見てみると、結構スパイスを多く使っています。

カルダモンがベースとなっていて、合わせたものがバニラ、バルサムペルー、ナツメグやガイヤクウッド、冬山椒、タンジェリンなど、甘いだけじゃない濃厚で複雑な香りでしたね。

 

 

Eーちなみにあの甘い香りはバニラですか?どこかお菓子っぽいというか、パティスリーっぽい香りがしますね。

 

Hーバニラだけでなくバルサムペルーという樹脂の香りですね。シナモンとバニラを合わせたような香りがします。ベースとなっているカルダモン自体がパティスリーっぽい甘さも感じる香りですし、実際焼き菓子にもスパイスは多く使われていますよね。

ちょうどその時えりちゃんは頭がフルで疲れてるって言っていたので甘さがフィットするタイミングだったんだと思います。やはり食べ物と同じで甘い香りは休まる感じがしたりするので。

 

Eーその時“自分を甘やかす“みたいなことも大事だっていうことを広美さんが仰っていて。

その後のパーソナルセッションでもそのキーワードはありましたし、その時の自分に必要な要素だったんだと思います。甘さの他に、フランスって異国を受け入れて自分達の生活に取り込んじゃうみたいな部分が自分にとっての魅力の1つだったりします。特にパリは様々な人種の人が住んでいますし、スパイスの香りというのも自分の中ではフランスに繋がったのかもしれません。

 

Hーそうですね。食事もスパイスを使った料理、ファラフェルなんかも好んで食べますよね。だから親和性はすごくあると思います。それから、バニラなんかはものすごくパリっぽい香りだと思うんです。こういう甘い香りって乾いた空気の土地でこそ良さが発揮されるんですよね。

 

Eーそうなんですね。でも確かに日本のような湿気のあるところだと重たく感じるのかも。

 

Hーそう。季節によっては重たく甘さが出過ぎてしまう時があるので、日本人では苦手という方も多いかもしれないですね。でも例えばこれからの寒い季節なんかは、バニラの甘さを含んだ複雑な香りが心地よかったりもするんだけれども。

 

 

Eー“複雑な香り“という部分でも一筋縄ではいかないフランス映画のあの世界観とリンクしたりしたのかなと思ったりしました。裏を返すとすごくシンプルなのかもしれないんですけど、人間っていろんな思考回路があって、ある程度複雑じゃないですか。そういう部分を結構フランス映画って出してくるので。そういう部分がリンクしたのかもしれません。

 

Hーまどろっこしい感じだったりね。分かります。

香りの感じ方って直接的なインスピレーションよりも、自分でも思いがけないタイミングでということの方が実際は多いのかもしれないって思うんです。その時の自分の思考の中に、香りと何か合致するものがあったとき、何かしら感情が動くんだと思うんですよね。あの香りが遠因としてパリの記憶と結びついたところがあって、それに当時考えていたこと、その時のえりちゃんだと映画とか文化、そういったものと結びついて更に広がっていくスイッチになったんだと思います。

 

 

Eー香りは記憶と結びつくとよく言われますもんね。まさにそうだったんだなと実感します。

 

Hー扉を開けるみたいな意味合いですよね。香りによって忘れてたことを思い出す、とかそういった事の方が感覚的に近いんです。

例えば、それがいつか食べたお菓子の香りかもしれないし、映画の中に出てくるシーンだったりとかとリンクしている時もあるかもしれないし。

あとは香水。フランスって香水の国でもあるので、印象的に映画の1シーンに出てきたりしますよね。小道具的に登場して女性が香水をつけるシーンだったり、象徴としてドレッサーに香水の瓶が置いてあるシーンだったり…潜在的にフランス自体が香りと結びついている、みたいなこともあるのかもしれないですね。

 

Eーそうですね。パリとかって街中いろんな香りがするじゃないですか。

それこそすごくスパイシーな匂いだったり、とにかく色んな香りがする。

 

Hー香水を強くつけている人も多いですしね。食事に行ってもバーンと匂いがする時もあるし、サービスの方ががもうガツン!と香水をつけていたりすることもある。文化として確立されている。

 

Eーそういう色んな匂いが複雑に混ざって記憶の中にあるのかもしれませんね。なんだか納得しました。

それから、ちょうどあの時に“髪結いの亭主“(1990公開. パトリス ルコント監督作品のフランス映画)を観た直後だったんですよね。すごく好きな映画なんですが、主人公がトルコのダンスを踊るエキゾチックなシーンがあって。そのシーンが印象的に記憶されていたので、そのスパイシーな香りと結びついた部分もあるかもしれません。

 

Hー“髪結いの亭主“ 私もとても好きな映画です。

あの映画に香りをつけるとしたら、出てくるヒロインの女性の為に何か香りを作るとしたら、スパイシーで甘やかで…もしかするとこういう香りになりそうな感じがしますね。

 

 

 

ー“気まぐれで奇妙な国“のこと

 

 

Eー少しパーソナルなお話になりますが、広美さんにとってのフランスの思い出をお聞きできたらと思います。

 

Hーそうですね。2015年かな?7年ほど前ですが、パリに行った時に立ち寄ったBULYのお店での思い出をお話しますね。

まだBULYが日本へ上陸する前、ボナパルト通りにお店が1店舗しかなかった時で。

立ち寄った時にたまたま創立者のヴィクトワールさんがお店にいらっしゃって、BULYを立ち上げた経緯だったり、植物に関することだったりとかを伺う機会があったんです。まだ自分がアロマテラピストとして活動を始める前だったのだけど、ちょうど人も全くいなくて可愛らしい店内で、いい香りがして、すごく良い時間だったんですよね。

その時の匂いとかお店のグリーンのタイルの鮮やかさなどをすごく覚えているし、購入した香水は今でも持っています。

 

広美さんがParisで撮影したBulyの店内の様子

 

Eー旅の中で偶然にできた良い時間ってすごく記憶に残りますよね。

 

Hー当時、スタッフとして働いていた日本人の女性の方が、またとても素敵で。

その頃私は、雑誌のWEBサイトで旅のコラムを書いていたのですが、日本のメディアではまだBULYのことが出ていない時だったので、書いても良いですか?と確認したんですね。

そしたら、書いてもらって大丈夫なんだけど、ヴィクトワールにも見せたいので記事が出来たら一応確認させて欲しいとなり。もちろん送りますと。

そんなやりとりをしたのち、最後に「どうしてパリにいらっしゃるんですか?」と彼女に質問をしたんですね。これはごく個人的な興味で。

流れから、彼女がお店の仕事以外で取り組んでいる芸術活動の話を聞いたりした最後に、彼女がフランスのことを“この気まぐれで奇妙な国“って言っていたんです。

「この国は本当に気まぐれで奇妙だけど、とても魅力のある国ですよね。」ということを仰っていて。

その言葉がすごく綺麗だったし、なんて素敵な表現だと思って、その時のBULYの空間とか匂いとかと一緒にすごく覚えていて。今でも彼女の声のトーン、柔らかな午後の日差しまで思い出せるくらいに。

その“気まぐれで奇妙な国“というのが、フランス映画の表現としてもそのものというか、コレクションのインスピレーションの話をえりちゃんと話しているときに話題に出た“ポンヌフの恋人“の1シーンだったり、そういうものとも全部繋がったんですよね。

 

 

Eーフランス映画っていきなりな展開が多いですもんね。えー?気まぐれに死んじゃうのー?!みたいな…本人にとっては気まぐれでは無いんでしょうけど、観ている方はびっくりしちゃう。

 

Hーそうそう。そういう突発的なパッションというか、奇妙さだったりシュールさだったりがありますよね。

 

Eーそうですね。20‘sのアート、マンレイやピカソだったりの作品って綺麗と奇妙の間というか…シュールレアリスムっていうくらいですしね。確かにその言葉、とてもピタッと当てはまります。そして的確なだけでなくって、とても素敵な表現ですね。

ちなみに広美さんがBULYを訪れた時に印象に残った香り、購入した香水は、どういう香りだったんですか?

 

Hーその時はちょうど冬、11月くらいだったかな。だいぶ寒くなっていて空気がカラカラに乾いている時で。だから、結構甘い香りでしたね。

サンダルウッドとかナツメグだったりが入っている、日本では選ばないような香り。あ、さっきの話と繋がりますね!(笑)

香水のノートで考えると、昨年のcharritaの香りと共通する部分があるかもしれません。

日本に帰ってこの香水をつけることは少ないだろうと思ったんですが、その時の記憶を留めておきたくて、ヴィクトワールが選んでくれた香りを購入しました。

 

広美さんがParisで撮影したBulyの店内の様子

 

Eー面白いですねー!なんだかすごく腑に落ちました。広美さんの無意識の中のパリでの記憶の断片が呼応したというか…

私の記憶のどこかにあるフランスを呼び起こしたのかもしれませんね。こんなに丸く収まる話だと思っていませんでした(笑)

 

Hー本当に!自分で話していてゾワッとしました(笑)

あとは、コロナ禍になる前の2018年の夏至にいたパリのことも印象的ですね。夏至の明るい空の下で、ちょうど街中でミュージックフェスティバルが開かれていて。みんなが楽しそうで乾杯していて。冬の気怠い空気とはまた違う、パリの陽の部分を味わったなぁという記憶です。

 

Eーヨーロッパは冬と夏で印象がガラッと変わりますよね。日照時間も長くて、パリのその頃は夜9時過ぎても明るいですもんね。

 

Hーそういう部分でも緩急がつきますよね。二面性というか、すごく陽気な部分と陰な部分とある部分と繋がるというか。気候にもよるし、日照時間だったりで人の感情って左右されるものですしね。

 

Eーそうですね。私はパリに冬訪れることが多かったんですが、初めて夏のパリに訪れた時にこんなにも印象が違うのかと驚きました。なんて楽しい陽気な気持ちになれるんだろうと!

 

Hーそう。どこまでも行けるようなね。広がる感じがしますよね。

 

Eーなんというかやっぱりラテンなんだなと。そういうルーツの部分を感じたりもします。

 

Hーうんうん。フランスのチャーミングな部分というのはあの季節に生まれているのかな、なんて思いますよね。

 

 

 

Eーそういう意味であなたにとってパーソナルなフランスってどんな香り?と聞かれると、私は、普段から好きでよく広美さんも使ってくれるネロリの香りを思い出したりします。何度か夏休みを南仏で過ごした良い想い出があって。明るい陽の光や、みんながとても幸せそうだった風景と重なって。広美さんはパーソナルに感じるフランスの香りって言われたら何を思い浮かべますか?

 

Hーなんでしょう・・・アニスなんかはすごくフランスっぽい感じがしますね。これもイメージですが、アンニュイで甘やかな感じとか、気怠い感じだったり。あとはさっきのお話に出てきたバニラなんかもそうですね。アロマテラピー的に言うところだと、パリではなくて南仏になるけどラベンダーかな。アニスはこんな感じの香りです。(ムエットを差し出す)

 

Eーあぁ!すごい。色で言うとパープルみたいな。でもスッキリ爽やかですね。

 

Hーこれはアニスマートル、アニスみたいな香りのするハーブだから少しスッキリとした香りです。本当のアニスシードはもっとボルドーというかダークパープル!みたいな濃厚な香りです。比べてみてください。(再びムエットを差し出す)

 

Eーうーん!ダークパープル!濃厚というか妖艶というか…

 

Hーブランデーとかお酒とかに合わせて食べたい芳醇なケーキのような香りですね。パリというと私はこんな香りを思い出します。

ちょっとスパイシーで甘いんだけど、中東系のスパイシーとはまた違う感じの香りなんですよね。何とも言えない恍惚とする感じというんでしょうか。あとは、マジョラムやタイムなどの薬草もフランスではよく使うのでハーブのイメージもありますね。

 

Eーなるほど。

広美さんの選んだアニスはディープなパープルやボルドー。

私が選んだネロリは、色をつけるなら柔らかで黄身がかったオレンジのような色を連想します。色相的にもこの2色は、ほぼ反対色になるんですよね。2人が選んだ香りだけでもフランスの陽と陰の二面を感じるのは面白いなと思います。

ちなみ香りにはワインのように、何か定義ってあるんでしょうか?

 

Hーワインほど定義はされていないかもしれないですね。

もう少し個人的なものっていう感じがします。香水だと、フローラル、シトラス、ウッディなどカテゴリーで区切られてはいますが、精油になると、人によって感じ方が全然違うなと思うことが多いです。

例えば「甘い」という表現も、バニラみたいな甘さもあればオレンジなんかの柑橘の甘さもある。アニスだって甘いと言う人もいればスパイシーだと言う人もいますしね。

体の構造が違うので、性別によっても感じ方は違います。これは○×な香りです、とは一言で定義できないものだなぁと感じます。

 

Eー確かに。記憶と結びついて感じ方が変わったりするようなものですもんね。

やはりすごく感覚的なものなんですね。今日は自分の香りに対する謎解きが少しできたような気がします。とても興味深くて楽しいお話しでした。ありがとう御座いました!

 

Hー今回のコレクションに辿り着くまでに、香りがこんな風に創作のインスピレーションになっているんだと知り、改めて感動しています。

励みにもなったし、これからのえりこさんのクリエーションがますます楽しみになりました。こちらこそ豊かな時間をありがとう御座いました。

 


加藤 広美/KATO HIROMI

■THENN AROMATHERAPY(ゼンアロマテラピー)
精油療法士 / 英国IFA認定 国際PEOTセラピスト
植物のもつ性質や効能と香りを掛け合わせて、心身の状態に合わせて生活に取り入れる方法を提案する。
精油(エッセンシャルオイル)を用いた健康の維持、促進に特化した国内では数少ないPEOTセラピスト。対面でのPersonal Blendingを
中心に、プロダクトの香りの監修や香りでの空間演出等も行う。PEOTはプロフェッショナル エッセンシャル オイル セラピーの略。

HP: https://thenn.tokyo/ Instagram : @___thenn

 

 

 


 

着用アイテムはこちら

 

 

A2523FJ205 No Collor Gilet ¥63,800

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04.Nov.2022

-IT’S MY FRENCH-  vol.2

”女性としての在り方を学ぶ場所であり

生活の楽しみ方を学ぶ場所”

 

vol.2

CHIAKI TAKAMOTO

-DIRECTOR&BUYER-

 

Blu-ray ポンヌフの恋人より

 

2022FALL/WINTER COLLECTIONのテーマ
“Cinématique“

Inspirationになったのは、”狂騒の時代”と言われた20’sのフランスや80’のフレンチニューシネマに生きたミューズ達。

自由にしなやかに、自身を信じて愛に生きる女性達はいつの時代も美しいもの。

今回は、CURRENTAGEにも関わりがあり、普段から多様に活躍する3人の女性達に”It’s my French=私にとってのフレンチ”を聞いてみました。

第2回目となる女性は、フリーランスとしてBuyerやDirectorを務める高本千晶さん。

バイヤーとして長年ヨーロッパを中心にバイイングを行なっており、特にフランスには関わりの深い高本さんが感じる

It’s my Frenchをお伺いしました。

 

 

 

 

ー強く憧れたパリのリセエンヌ

 

10代の頃からずっと漠然とフランスとファッションに憧れと関心があった私は、大学にてフレンチを学ぶ選択をした。

90’Sはまさにフレンチ、パリジェンヌブームでもあり、フランス語フランス文学科を選択すればフランス留学へ

何ならそのままパリに住んじゃったり、、、と妄想は膨らみ、アニエス・ベーを身に纏い、evianと雑誌Figaroを片手に石畳を歩く姿に思いを馳せながら固いパンをかじる当時の自分を振り返ると少々痛々しくて笑えてしまう。

中でもパリのリセエンヌ(女子学生)スタイルには強く憧れた。そのきっかけとなる教科書、雑誌Oliveの存在は大きかった。雑誌の中のパリジェンヌスタイルを真似してスタイリングしたり、ちょっと個性的で何かこだわりの強いライフスタイルにも憧れた。

本や音楽や映画、1人で時間を過ごすカフェ、ヘアスタイルまで当時の出来る範囲でのフランスに手を伸ばしてのめり込んでいった。

センター分けの前髪をサイドに撫で付けピタッとした三つ編み、ゆるーく雰囲気のあるお団子のヘアスタイル、シンプルなミニスカートにレースアップのブーツスタイル、道端でタバコを吸う姿、、、

自分の脳裏のストリートスナップが膨らんでいったのもこの頃から。

 

 

高本さん本人私物より 

 

 

ー人間らしい愛の描写そのものが ”フランス映画”

 

そんな私が初めてフランス映画に出会ったのは、大学生の頃。まさに1990年代真っ只中。

今だにその頃の多感な気持ちもその頃のエキサイティングなことも、思い返してはつい昨日のことのように胸がキュンとしながらも、初めて出会ったフランス映画が何かについては鮮明に思い出せないのが正直なところ。

ただその頃に、感銘を受けて様々な年代のフランス映画に手を伸ばしたきっかけの代表作として挙げられるのは、1992年日本公開の「ポンヌフの恋人」(Les Amants du Pont-Neuf)。

ポン・ヌフがリアリティーあるロケーションとなり、当時まだそこまでのダーティーな世界を好まなかった甘ぬるい少女自身に、天涯孤独の青年ホームレスと酒呑み、自ら地面に頭を擦り付け、車に足を轢かれるシーンはスタートから衝撃的だった。

ただただお洒落フレンチ映画に浸りたい一心で向き合おうと掻き立たせてくれた気持ちは多感な感覚と共に忍耐も含めて脳裏に焼き付いている。

そこに美しいながら一筋縄ではいかない環境と失明の危機を抱えた女性。初めて知ったそのフレンチ女優は「ジュリエット・ビノシュ」だった。

愛が描かれながらも、当時のハリウッド映画との大きな違いは、人間そのものの情熱やエゴのぶつかり合い。今なら理解できるが、その魂のぶつかり合いから生まれた愛が絡み合ったストーリーは、当時の私にはとても重く心に残る内容だった。

その全ての背景に愛の形があり、また単純なる美とは異なる。でも最終的にとても美しい光景とスタイルと憎悪全て含めて情熱的で人間らしい愛の描写そのものが「フランス映画」というインパクトが私のフレンチシネマデビューである。

 

「ポンヌフの恋人」(Les Amants du Pont-Neuf)のワンシーン

「ポンヌフの恋人」はパリの美しい風景と壮大な花火のシーンに誰もが魅了されることは間違いない。

そして、社会や人間の重い風潮や感情の描写であるにも関わらず、最終的には演じる俳優達はストーリーもファッションも全てがアイコニックで時代を超えて美しいとしか思い出せない。

それがフランス映画の魅了される最大マジックだと思っている。その魅力に取り憑かれて以降、1950年代末からのヌーベルヴァーグの様々な映画「勝手にしやがれ」、「大人は判ってくれない」、「女と男のいる舗道」、「地下鉄のザジ」などなどを見ては、その素敵な世界に刺激を受けていった。

 

ー皮肉の裏返しに人間味とユーモアを感じる

 

私がフランス映画に惹きつけられる理由は2つある。

1つ目は、映画そのものが娯楽というよりも、芸術性の高い作品として提案されているということもあり、そのフランスの芸術性そのものに惹きつけられていると感じるからだ。

だいたい舞台に現実味あり、心理描写や人間性を問い続けるような内容が多く、逆に感情移入しやすくて、そういったフランス映画の魅力自体がとても自分好み。

その問いかけられる心理描写や感情と皮肉の裏返しに人間味とユーモアも感じる。

年齢や性別という垣根はなく、ずーっと何かについて討論するシーンやずーっと愛について語り、愛に生きている様子など、美しいだけでなく光と影があり、そこに人間らしい可愛らしさを感じる。

そんな自由な表現力と人間力に私は憧れを抱いている。

 

 

「女は女である」アンナカリーナ

 

ー惹きつけられるフレンチファッション

 

2つ目の理由は、何と言ってもその中のアイコニックなファッションスタイル。

トレンドではない独特な雰囲気がとびきりお洒落に感じて、時代を超えても永遠の憧れとして私の中でインプットされている。そのスタイルを見たくて映画を見ることの方が多いくらいだ。

中でもファッションに惹かれた映画の一つ、月並みではあるが「女は女である」。

アンナ・カリーナの着る「赤」の魅力。赤のニットに赤のタイツ。あれを見ると赤のニットとタイツを買いに走りたくなる衝動に毎回駆られる。そして、こなれたトレンチコート、軽めに被ったベレー帽。キュッと引かれたアイラインとのバランスも絶妙。

どこかその人なりの「こなれ感」があるのもフレンチファッションに惹きつけられるポイント。

だからこそ真似しようと思ってもなかなか真似できなくて、何度も見返してしまう。

セーラー服にセーラー帽のシーンも好きで、今だにセーラーカラーを探してしまうのはこのシーンの影響も大きいのかもしれない。

そして、「男と女」も好きな一つ。

映画の舞台になったドーヴィルの男前な海の背景も相まって、襟を立たせたコートやムートン、ハイネックのざっくりしたニット、アヌーク・エーメの大人の色気が引き立って、冬になるとこんなスタイルで外に出たい!と思う。

最近のお気に入りは1985年日本公開の「海辺のポーリーヌ」。

避暑地ノルマンディーの海岸リゾートスタイルがどれを切り取ってもグッとくるものばかりで画面スクショが止まらない。

オーセンティックなアイテムの着こなしもヘルシーでどこかセクシー。

シャツのボタンの開け方やボーダーの合わせ方、15歳のポーリーヌのヘルシーな身体に可憐な白いコットンキャミドレスなのに可憐すぎないバランス。

ヘルシーでありながら大胆な肌の見せ方、どこか着崩すこなれ感。セクシーさが際立つところに、フレンチスタイルの最大の魅力があるというのが私が惹かれる一番のポイントである。

 

 

私にとってフランスとは、「女性」としての在り方を学ぶ場所。そして「生活」の楽しみ方を学ぶ場所。

常に「愛」について語っている気がするし、そのスタイルがすごくナチュラル。なんだか気取らなくてもいいんだというアドバイスしてくれている気がする(笑)。

例えば、自分にとっても欠かせない赤い口紅「ROUGE」。

現代の風潮ではないけど、フランス女性はお気に入りの「ROUGE」を必ず1本持っていると言う。

でも、それは決してデートの時ではなく、お散歩に行く時、1人でパンを買いに行く時につけるもの。

なぜなら、自分の為のROUGEで決まった相手に媚びるのではなく、自分の魅力を見知らぬ誰かに表現する為のものだから。

 

 

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高本 千晶/TAKAMOTO CHIAKI

 

大学卒業後、アパレルメーカーにて販売スタッフ・店長を経て2002年よりバイヤーに就任。

2021年11月独立。以降、フリーランスとしてバイヤーに携わりながら、ディレクターとして新たな一歩に奮闘中。

 

Instagram    Chiaki Takamoto (@cak_32490)


 

 

 

 

 

 

22.Oct.2022

-IT’S MY FRENCH-

“エレガンス肝っ玉”

vol.1

SHOKO OTAKE

-ARTIST-

 

©大竹笙子

 

2022FALL/WINTER COLLECTIONのテーマ

“Cinématique“

Inspirationになったのは、”狂騒の時代”と言われた20’sのフランスや80’のフレンチニューシネマに生きたミューズ達。

自由にしなやかに、自身を信じて愛に生きる女性達はいつの時代も美しいもの。

今回は、CURRENTAGEにも関わりがあり、普段から多様に活躍する3人の女性達に”It’s my French=私にとってのフレンチ”を聞いてみました。

第1回目となる女性は、今回2回目のコラボレーションとなるアーティスト大竹笙子氏。

インスピレーションの1つである20’sの女性達やMan Rayの写真作品”レイヨグラフ”、80’Sのフレンチシネマ”ポンヌフの恋人”から着想して、

アーティスト大竹笙子氏が2つの版画作品を制作。

今回はその制作に於ける、It’s my Frenchをお話しして頂きました。

 

「エレガンス肝っ玉」

ロンドンのファッションブランドで夏休みの間インターシップをした時、フランス人のニノンという年下の強気レディーと友達になった。

喜怒哀楽をちゃんと態度に出せて、どんなことも言ってしまうので冷や冷やしたけれど、彼女の発言はいつも自立していて惚れ惚れした。

コレクション発表が直前に迫ると、山積みの準備で夜遅くまで帰れない日々が続いた。

疲れ果てて集中力が切れたニノンと私は、「お腹すいた」と「疲れた」の2つの単語を互いの言語で教え合い、

それらを、早口に、スローに、悲しそうに、嬉しそうに、色々なバージョンで言い合うことで気分を紛らわせた。

その結果、エレガントセクシーバージョンが効果てきめんで、

「お腹すいたァ〜〜〜〜〜ン」

「ジェファ〜〜〜〜〜ン」

「疲れた〜〜〜〜〜ン」

「ファティゲ〜〜〜〜〜ン」

と吐息混じりに放たれるカタコト母国語が可笑しくて何度も言い合い、その時だけは笑って溜飲を下げることができた。

エレガントセクシーな呼応で一つの友情を育んだ記憶を持っていることが私は嬉しい。

 

©大竹笙子

 

今回 CURRENTAGE の版画を制作するタイミングで見たフランス映画「ポンヌフの恋人」や「ベティーブルー」、「DIVA」の主人公の女性たちと、

それらを見た後に想起されたニノン自身のことや彼女との「ジェファ〜〜〜〜〜ン」な記憶が混ざり合い、

むくむくと「エレガンス肝っ玉レディー」なる人物が浮かび上がった。

自然体でユニークで品があり、かつ優雅な爆発力を持つ痛快で(時々めちゃくちゃで)肝がすわった人。

そんな人を想像しつつ、自分もそうありたいと思いながら、今回の2つの版画

”Nocturnal Bloom”と”Pont Neuf fireworks”を仕上げていった。

 

©大竹笙子

「ジェファ〜〜〜〜〜ンファティゲ〜〜〜〜〜ン」

 

とエレガント&セクシーに時々今も唱えてみる。

あのニノンとの時間を思い出すと共に、これからは「エレガンス肝っ玉」を呼び起こしてくれる呪文にもなった。

エレガンス肝っ玉を携える全ての人に”Nocturnal Bloom”と”Pont Neuf fireworks”を捧げます。

 

<Nocturnal Bloom>

 

<Pont Neuf fireworks>

 

 

 

“CURRENTAGE SHOKO OTAKE” COLLECTION

 

 

ONLINE STOREはこちら

 

 


大竹笙子/SHOKO OTAKE

 

1993年生まれ。

日常の会話や目にした情景を、版画やドローイングなど様々な技法を用いて具現化する。

ほんの挿画やファッションのテキスタイルにも作品を提供。

作品集に『DUMBBELL  KUMBBELL I,Ⅱ,Ⅲ』がある。

2022年12月3日よりギャラリー・アートアンリミテッドにて個展予定。

 

着用アイテムは22SSのCURRENTAGE SHOKO OTAKE

SHOKO OTAKE HP

 


 

22.Mar.2022

CURRENTAGE SHOKO OTAKE SPECIAL INTERVIEW

CURRENTAGE

SHOKO OTAKE

Capsule collection #01

 

アーティスト大竹笙子氏がCURRENTAGEの為に

制作してくれた版画作品を落とし込んだ

カプセルコレクションをローンチ。

 

コレクション一覧はこちら

 

普段の制作は日常の会話や目にした情景を

版画やドローイングなど様々な技法を用いて

具現化している大竹氏が、

CURRENTAGEデザイナー塚崎と対話を重ね、

2022 SSコレクションの為に制作いただいた

版画作品の制作秘話や

今後の活動に関してなど、お話しを伺いました。

 

Q1.今回CURRENTAGE SHOKO OTAKEの為に作成してくれた作品はどのような想いで制作されましたか?

 


A.

普段自分が作ったものを全員に良いと思われなくても良いとは思っていますが、それでも今回のCURRENTAGEとのコラボレーションは、最終形態がお洋服で、しかも絵柄を制作するという初めてのご依頼だったので、自分だけが良いと思うのではなく、誰かに着たい!と思ってもらえるものを提供したい、しなければという欲と緊張感が常にありました。
しかし、デザイナーの塚崎さんと直接お会いし、コレクションのテーマを伺い、そこから自由に考えさせていただいたので、どのようになるかは見えないながらも、嫌な緊張感では全くなく、モチベーションが上がり続ける良い制作期間でした。

 

ジェンダーレス、エイジレス、ボーダーレスな現代の民族衣装をイメージしてデザインされた事からモデルも個性豊かなメンバーに着用してもらった。撮影は岡本充男氏。

 

Q2.2つの作品がありますが、それぞれにはどんなイメージや想いで制作されたのでしょうか?

またカプセルコレクションのネームや下げ札用に素敵なロゴも作成いただきました。?

それぞれ制作にあたりインスピレーションやイメージなどがあれば教えてください。

 

A.

今回のコレクションのインスピレーションに民族衣装があると伺ったので、民族衣装を着た人たちの写真をたくさんリサーチしました。
彼女たちから、衣服は着るものではなく巻きつけるもの、という原始的な魅力を感じたとともに、原始的な手段を用いる版画とピッタリだなとも思いました。

 

制作のインスピレーションになった写真集の1ページ。布を巻きつけることで“纏う“衣服。シルバーやビーズのアクセサリーを更に身につけて自身を飾る人々。

 


大竹氏が特にインスピレーションを受けた“聖なる銀 アジアの装身具“の1ページ。装飾部分の模様が、よく見ると“Meltage Rythm“の版画作品に溶け込んでいる。

 

”Snaky Flower Batik”
身体に巻きつけた布の柄が彼女たちの体に沿って曲線的になっているのをみて、自然とドローイングの花も曲線を帯びました。
また、アフリカンプリントの布端に産地や生産者の名前がテキスタイルの一部として入っているのが素敵だと塚崎さんと共感したので、せっかく作るなら、とCURRENTAGE産のテキスタイルという判子の意味もこめて彫らせていただきました。

 

 

大竹氏と塚崎が素敵だと共感したアフリカンバティックの生地耳のディテール。大竹氏の彫った“CURRENTAGE“はモザイクタイルのようにも見える。
見ていて飽きることがない不思議な絵柄だ。

 

”Meltage Rythm”
シルバーやビーズがジャラジャラ付いたアクセサリーと数種類の布を組み合わせている彼女たちのスタイルはとてもカッコ良く、それらの偶然的な美しさを1枚の版画にしたらどうなるだろうと、自分でも完成形はあまり想像できないまま実験的に制作し始めました。
スケッチブックにたくさんドローイングし、それらが溶け込むよう混ざり合うよう、コラージュ的に組み合わせながら最終的な絵柄を決めました。
版を一回刷って完結するのではなく、リピートして刷ることでひとつの柄が完成するという新しい経験をしました。

 


 

“CURRENTAGE SHOKO OTAKE LOGO“
洋服にとってネームは重要な細部のひとつだと思っているので、ネームも作らせていただき光栄です。
小さい頃から面白いと思ったフォントを真似して描いてみたり、良い形の文字を探すことは日頃から癖になっています。
ネームに必要なアルファベットを納得のいくおさまりの良い形に決まるまで繰り返し描き、一気に彫りました。

 

版画特有のかすれや溝に残ったインク染みなどを再現して、まるで一枚一枚、版画したような質感のプリントネーム

 

“CURRENTAGE SHOKO OTAKE”
ロゴの版木(ゴム版を使用)

 

Q3.CURRENTAGEとのコラボレーションをやってみて、何か感じたことや想いがあれば教えてください。

 

A.

塚崎さんの頭の中を具現化するような制作はドキドキする楽しさがありましたし、モデルさんの着た洋服がゆらゆらなびいているのを目の当たりにした時、喜びで満たされました。
ベストな状態でCURRENTAGEにバトンタッチするために放出した自分のエネルギーは、実際に袖を通された時、CURRENTAGEからのエネルギーと相まって、結果倍のエネルギーとなって自分に返ってきました。
エネルギーを放出したはずなのに、満たされたというか。
自分1人では絶対成し得ない素敵な経験をできたことは本当に幸せなことだと思います。

 


毎シーズン日常の中から気になるアートや建築、映画などコレクションのソースを決めて徹底的にリサーチする。
オリジナルで作られる素材やカラー、絵柄はその空気を纏う。

 

Q4.版画という表現手法は、伝統的でありながら現代のアートシーンでは希少な表現に思えます。

なぜ版画という表現方法を選ばれたのですか?

 

A.
作っている自分さえも最後刷った紙をめくってみるまで、どんな絵が出てくるのかわからないところが版画の魅力のひとつだと思います。
私は下絵を直接版木に書くことが多いのですが、その絵が反転した姿をおおよそ予想できているつもりでも、彫り残しや、ちょっとした彫りの具合によって必ずと言っていいほど予想は裏切られます。
頭では分かっていますが、彫った絵が反転するって面白いな、と刷る度に思います。
もうひとつ、版画はフィジカルでアナログな手間が多い表現方法だと思います。
これ無駄じゃん?邪魔じゃん?で一掃され、効率化や簡素化重視になっている世の中に、筋肉痛と増えていく版木を積み重ねていくことで、ささやかな抵抗をしているのかもしれません。

 

大竹氏が使用する版画刀。何種もの刀を使い分け、イメージする線を彫っていく。

 


”Snaky Flower Batik”の版木(ゴム版)。反転を予想して彫るという作業はとても興味深い。

 

Q5.昨年から姉である大竹彩子さんとの2人展やPARCO PRINT CENTERのポスター展参加など

精力的に活動されていますが、今年は個展など開催される予定はありますか?

また今後やってみたい事や行ってみたい場所があれば教えてください。

 

A.

一番近い展示予定だと、今年の4月末から代官山にあるSALT AND PEPPERで個展を予定しています。

大きな作品を作ってみたいと思っていたので、この個展で展示できればと思っています。

もうひとつやってみたいことは夏目漱石全集読破!

 

Q6.笙子さんは、CURRENTAGE SHOKO OTAKEのアイテムをどんな風に着たいですか?

 

A.

一生着て、共にシミ・シワをつけていきたいです!

 

シルクのスカーフは2つの柄を組み合わせてデザイン。 巻く方向や巻き方で柄の出方が変わるのも面白い。

パンツは絵柄の間に余白を作った側章風のデザイン。
職人が1枚ずつハンドプリントすることで版画の強さに負けない唯一無二の佇まいに仕上がっている。

 

Q7.最後にCURRENTAGE SHOKO OTAKEの洋服やスカーフを手に取ってくださる

お客様にメッセージをお願いします。

 

A.

直感でイイ!と思っていただけたなら、それだけで本望です。

何かを見てイイ!と思う直感は間違いなく日常の自分の支えになるはず。

贅沢な気持ちをCURRENTAGE SHOKO OTAKEのお洋服を通じて共有できれば幸いです。