22.Sep.2023
23 Autumn&Winter Collection VOL.1
“Vividly emotional journey”
世界中で美しいものを探すために旅を重ねる。
それらは、より良いマテリアルを見つける旅でもあり、
時代のムードを感じる旅。
コロナでのパンデミックを経て約2年半振りに出た旅。
2週間に渡ってフランス〜スイス〜ドイツを巡り、
何を見て、何を感じ
それをどのようにコレクションに落とし込んだのか。
デザイナー塚崎恵理子の旅の記憶。
VOL.1
“Beautiful things in France”
長い空の旅を経て、まず最初に向かったのはフランス。
渡航制限が緩まり、仕事でポルトガルを訪れたのがきっかけとなり、私の旅熱は一気に火が付いた。
やっとこの時が来た!
パンデミック前には年に1、2度は訪れていた馴染み深いパリ。
まずは肩慣らしも兼ねて慣れ親しんだ国から久しぶりの海外の旅を始めようとパリを最初の旅先に選んだ。
Bonjour!とプチホテルのマダムが元気に挨拶してくれる。パリらしくて可愛らしい中庭のあるホテル。早朝からチェックインさせてくれて幸先も良し。出発前にパリに住む方に治安の悪化なども聞いていたので、私は少し緊張気味に街へ出た。
朝の乾燥したキリッと冷たい空気が心地良い。およそ2年半の時間が馴れ合いを絶ってくれたようで、街角のカフェで食べるクロワッサンとカフェクレームの朝食ですら新鮮で楽しく感じる。
数時間で緊張は何処へ、高揚感にとって変わり旅の1日目をスタートすることができた。
まず訪れたのは郊外の蚤の市。
パリ北部にあるパリ最大の蚤の市クリニャンクールやヴァンヴの蚤の市は時間が合えば必ず訪れる大好きな場所。久しぶりの宝探し感覚でワクワクしながら、いつも行くお店や新しいお店も2日に渡ってゆっくり時間をとって訪れた。
その中で見つけた30年代のチュールの端切。チュールの上に美しくシックなスパンコールとビーズをあしらった控えめながらも美しい刺繍は黒一色でまとめられていてとてもシック。見つけた瞬間に心射抜かれて購入。
実はこの日、クリニャンクールに行く前にルーヴルの装飾美術館で開催されていたSchiaparelliの展示を観ていて、その美しい手仕事とクリエーションに感動していたので、引き寄せられたとも言えるかもしれない。
モノやヒトとの出逢いには必ず流れというものがあるものだ。
日本にも貴重なアンティークやヴィンテージを扱う良店は沢山あるし、今は画面上でなんでも擬似体験できたり情報や写真を見ることはできる。確かに、これはこれで便利なのだが…私はやっぱりそれじゃ足りなくて、現地に足を運んで自分で見て触れて選ぶ事で想像が何倍にも膨らんでストーリーができていくタイプ。
いかにそういうことが自分にとって大事なことなのかを再認識させられる。
Schiaparelliの展示
今回蚤の市で出逢ったアンティークの端切れは、時代を超えて現代に受け継がれるインドの手仕事にて見事に再現する事が出来た。 そしてその素材を日本で、繊細な刺繍に気遣いながら丁寧に縫製してもらって出来上がったアイテムがこちら。
ノーカラーのシャツのようなデザイン。後ろ開きにして前後でも着用可能。インナーとしてレイヤードしてもシャツやアウターの上からレイヤードしても。透け感と美しい刺繍を楽しんでスタイリングのプラスワンに。
A2533FB212 ¥74,800 Spangle Sheer Shirt
ラップスカート。パンツやスカートの上からレイヤードして着用できるアイテム。ワンショルダー風に着たりホルター風に着たり、1枚の布なので、どう着るかで雰囲気の変えられる楽しいアイテム。
A2533FS214 ¥74,800 Spangle Sheer wrap skirt
そして、次に向かったのは織物の街LYON。
夜が明ける前にホテルを出る。
パリからブルゴーニュ地方の長閑な田舎町を横目にTGVで2時間ほど南下した場所にあるリヨンへ向かう。ここは、古くから織物の街として栄えた場所。今では美食の街としても有名なローヌアルプ地方の観光拠点でもある。
今回は、以前からお世話になっている生地メーカーである“BUCOL“社を訪問するために訪れた。 1924年の創業当初からオートクチュールの伝統的デザイナーと共に創られた素材の数々はもはや芸術品とも呼べるレベル。
HERMES、CHANEL、DIOR、Dries Van Nottenなど数々のメゾンのデザイナーのクリエーションを支え、ファッションの歴史を紡いできた老舗メーカーのプライドを感じる。現在はHERMESグループの傘下でもあるBUCOL。HERMESはフランスの真摯な物作りを途絶えさせないために小さな企業や工房を傘下にして守るという方法をとっているそうだ。
BUCOLの工房では、HERMESシルクスカーフの代名詞Carreを生産していた。
昨年完成したばかりだという新しいオフィスでは人が集まるようなワンブレイクスペースが所々にあり、自然とコミュニケーションの取れるような明るく良い雰囲気。
広々とした社員食堂にはテラス席もあり、気持ち良い空間で私達もランチをいただく。 青空の下、美味しいランチを頂きながらここで働けたら幸せそうだなぁと素直に感じる。 革新をしながら人々の幸せや文化を担う企業の姿勢がまた魅力なのだと改めて感じた。
徹底したクリエーションと生産、管理された圧巻のアーカイヴ、クリエーションの為の貴重な資料をデザイナーさんに見せてもらう幸せな一日を過ごすことができた。
時間をかけ、膨大な素材のアーカイブの中から選んだ美しいジャガード素材はゴールドとシルバーのラメ糸を織り込んだフラワーパターン。ジャージのような軽さとストレッチ性も兼ね備えた不思議な質感は、ストレッチを入れることで独特の凹凸感を出しているそう。
中々日本では見たことのない技術にインスピレーションを掻き立てられる。
ラメの色などもどんな物が使えるかなど打ち合わせをして選定。 出来上がったのは、BUCOLならではのエレガントでありつつもエッジの効いたムードの素材。 古い資料から選んだので再現が難しかったようで、ギリギリまで粘ってなんとか展示会に間に合った。
日本の素材、フランスの素材、イタリアの素材…同じ織物でも国によってムードが違う。糸の本数、染色の技術、織機の性質、フィニッシュの具合・・・究極は水質すら関係してくる。気が遠くなるほどの工程を経て作られる生地だからこそ。
それぞれに良さがあるので、出したい雰囲気で作ってもらう場所を選ぶ。 本当にちょっとしたことがその洋服が纏う空気を作るから服作りは奥深くて楽しいのだ。
今回BUCOLのファブリックを使用したアイテムフリルカマーベルト付きタイトスカート。フロントスリットでも着ることが出来ます。カマーベルトはトップス風に着たり、スタイリングをじ自由に楽しめます。型によってはリバーシブルでも楽しめます。
A2533FS225 ¥104,500
Next Journey to Swiss → JOURNAL Vol.2